仲が良くなったと知って…
また、油断していたのかもしれない
絵名が慌ててあなたの下の名前の元に駆け寄った時、
オレはリビングであなたの下の名前と冬弥の間に立っていた
あいつが何かしたわけじゃないってことくらい隣で見ていたから知ってる
だけど——たとえ何もしていなくても、
冬弥が“男”であることが、あいつを“怖い”と感じさせてしまうこともある
冬弥も何も知らないわけじゃない
あなたの下の名前が何かを抱えているってことぐらいは当たり前に気がついていた
何があったんだ、って問われた時、少し迷った
もう話してしまおうか、でも……
そう言ってから、あいつの顔をまっすぐ見据えた
あいつの瞳に浮かぶ焦燥と困惑
でもオレは引かなかった
それは相棒としての忠告じゃない
”あなたの下の名前の兄”としての、ただの願いだった
オレたち家族はあいつがどんなふうに壊れて、それでもまた立ち上がろうとしてきたか…知っている
時間がかかっても、思い出してしまっても、傷が消えなくても
それでもあいつは今日まで生きて、笑って…
誰かを…信じようとした
その勇気を、誰にも壊させたくなかった
俺は、あなたの下の名前の全てを知らない
だけど知ろうとしていたかと問われたら、言葉に詰まる
安心させたいと思っていた
少しも傷つけたくないと願っていた
けれどそれは、どこかで『できることだけで接したい』という安全な距離に立ったままの“都合のいい優しさ”だったのかもしれない
何があったのか、本当は知りたい
けど、問いただすことも、軽く励ますことも違う
俺にできることがあるとすれば、それは——
やはり…”待つこと”しかない
けれど、ただ黙って見ているだけじゃダメだ
彼女が前を向いた時に、その先に自分がいていいと思ってもらえるように…
俺はちゃんと、自分と向き合わなきゃいけない
あなたの下の名前の震えていた肩
肩が触れそうなぐらい近く、距離を取っていた仕草
全てが、ただの“怖がり”なんかじゃなかった
——きっと、俺の知らない深い傷がそこにある
誰に向けたわけでもない、独り言のように呟いた
もう、彼女の心に触れたいなんて安易なことは言わない
でも、それでも
彼女がまた誰かを信じたいと思ったときに、俺が“そこにいる”存在でありたい
それが今の俺にできる、覚悟だと思った















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!