第32話

朝の光と鼓動
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2025/11/29 07:17 更新
まぶしい光がカーテンの隙間から差し込み、瞼をそっと叩いた。
目を開けると、隣には眠る照さんの横顔。
大きな体を少し窮屈そうに折り曲げ、僕の肩に腕を回して眠っている。

――昨夜のことが鮮明に蘇る。
ソファで互いに体を寄せ合い、耳を甘噛みし、囁き合い、ただそれだけで全身が熱を持った夜。
行為はなくても、気持ちは十分に溶け合っていた。
(なまえ)
あなた
……照さん
小さな声で呼ぶと、彼の眉がわずかに動いた。
岩本照
岩本照
……ん……あなたの下の名前……?
掠れた声が僕の名を呼ぶ。
まだ半分夢の中にいるような顔で、腕の力を強め、僕を抱き寄せた。
(なまえ)
あなた
もう朝ですよ
そう言いながらも、心地よくて抗えない。
大きな胸板に頬を押し当てると、鼓動がはっきりと伝わってきた。

昨夜、耳元で何度も聞いた荒い息づかいを思い出し、胸が熱くなる。
――こんなに近くにいるのに、まだ物足りない。
岩本照
岩本照
……もうちょっとだけ
彼がそう囁き、僕の髪に唇を落とした。
甘やかな声に、僕は抵抗をやめ、目を閉じる。
時間が止まればいい――そう思うほどに幸せだった。
朝食を並べる頃には、外の光は完全に目を覚まし、街の音が聞こえてきていた。
僕が用意した簡単なトーストとスクランブルエッグ。
食卓で並んで座るだけなのに、昨夜の余韻が残っていて視線を合わせづらい。
岩本照
岩本照
……なぁ
照さんがフォークを置き、真剣な顔を向ける。
(なまえ)
あなた
はい
岩本照
岩本照
昨日のこと、後悔してねぇか?
唐突な問いに息を呑む。
(なまえ)
あなた
……してません
即答だった。
(なまえ)
あなた
むしろ……嬉しかったです
そう告げると、彼は安心したように微笑んだ。
岩本照
岩本照
ならいい
大きな手がまた僕の頭を撫でる。
その仕草に、胸の奥がじんと熱くなる。
午後からは大学へ。
普段通り講義を受け、友人と笑い合う。
けれど心の奥は、ずっと昨夜の照さんに囚われていた。

ノートに視線を落としても、耳元に触れる彼の唇の感触が蘇る。
友達
あなたの下の名前?
友人に声をかけられて慌てて返事をする。
――危ない。日常の顔を保たなきゃ。

けれど、ふとスマホを見ると、照さんからのメッセージが届いていた。
『今夜も会いたい』
それだけの短い言葉に、心臓が跳ね上がる。

――もう後戻りはできない。
僕は静かにスマホを握りしめ、小さく息を吐いた。
そして短く返した。
『はい』
夜、再び照さんの部屋に戻る。
昨日と同じソファに並んで座ると、何も言わなくても互いの体が引き寄せられた。
唇が重なり、息が混ざり合う。
耳元に彼の吐息が触れるたび、昨夜の感覚が蘇り、体が熱を帯びていく。
岩本照
岩本照
……あなたの下の名前
囁く声が甘く胸に落ちる。
岩本照
岩本照
俺、もう……止められねぇかも
彼の言葉に、全身が震えた。
でも逃げる気持ちはなかった。
(なまえ)
あなた
……止めないでください
震える声でそう答えた瞬間、彼の瞳が一層強く輝いた。

――僕はもう、この人に全てを委ねる。
そう心で呟きながら、また彼の腕の中に沈んでいった。

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