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第7話

第六話
35
2026/02/14 12:00 更新




 



   あなたは、彼を引っ張った勢いのまま


   光の届かない
   路地裏の影へとたたらを踏んでいた



   そこは、街灯の光が
   ナイフで切り取られたように途切れる



   深い、深い、闇の中




   半透明の彼女の体は、

   その闇に溶け込んでしまいそうに淡い








あなた
  ....  




   あなたは自分の指先を凝視していた




   誰に触れようとしても、
   すり抜けるだけだったのに






   確かに、彼に触れられたのだ....



   微かに捉えた感触が、ひどく懐かしくて

   なんども手を開いては閉じてしまう









   その時、耳に彼の呼吸音が入る



kzh
......は、.....ぁ......っ






   あ、そうだった....

   私は彼のフードを思いっきり引いたのだ




あなた
.....あ、あの、ごめんなさ__




   けれど、その言葉は途中で喉の奥に詰まった



   振り返った彼の視線は

   私の顔を通り抜けて、

   誰もいないはずの夜の空間を彷徨っている






あなた
 ( あ、そうだった....
伝わるわけ、ないよね.....)




   伸ばしかけた手は、力なく空を切った





   生きていた頃からずっとそうだった。


   私がどれだけ叫んでも、

   どれだけ手を伸ばしても、




   世界は私を「いないもの」として処理する


   幽霊になった今なら、なおさらだ







   彼は首をさすりながら
   怪訝そうに周囲を見渡している







kzh
....っ、いってぇ....
なんだよ今の、首吊るかと思ったわ....
kzh
風?いや、今の絶対に
誰かに引っ張られただろ....





   彼の赤い瞳が

   私のいる場所をじっと見つめる



   けれど、そこに映っているのは

   私ではなく、街灯の光だけ。






   私は、カーディガンの端をぎゅっと握って

   その場から消えようと、一歩下がった




   その時だった














kzh
....待て、そこに、誰がいんの?





   彼の声がより一層深く、夜の空気に震える



   彼は目を泳がせながらも、


   逃げ出す代わりに、震える手で

   スマートフォンのライトをこちらに向けた










kzh
....おい。...もし、さっき
俺のこと助けてくれたってんなら、
kzh
....なんか、リアクションしろよ
kzh
無視すんな。
こっちは...死ぬほど怖ぇんだからよ





   光の矢が、闇を貫く。




   光側にいる彼が、  

   自らその手を闇へと伸ばして


   彼女を見つけようとしていた。























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