イザナside
あいつとあの子に出会ったのは、蝉の声が五月蝿い茹だるような暑さの日だった。
幸薄そうな女と小さくてヒョロいガキ達。手を繋いで、明らかに大きい大人用の麦わら帽子を被せられて現れたのが、あいつだった。あの子は、
コサージュの麦わら帽子を被って現れた。
多分俺よりも年下で、枝みたいな手足は少し握っただけで折れそうな印象を抱かせる。施設の入口で女と話すガキ達の表情は、麦わら帽子のつばに隠れて遠巻きに眺めてる俺には見えなかった。
〜数分後〜
数分後、女はガキの頬を一撫でして施設の外へと出た。あいつが追えない場所へと自らの足で進んだ。名残惜しい様子すら見せない。一度も振り返らない女の背中を、あいつは短パンの裾を両手で強く握り締めながら見つめていた。角を曲がり道に誰もいないくなった後も、ただじっとそこに佇んでいた。
そういう子供は少なくない。もしかしたら戻ってきてくれるかも、やっぱり一緒に暮らそうと抱き締めてくれるかもと期待しているのだ。俺のように自分は捨てられたのだとすんなり受け入れられる可愛げのない子供は、ほんのひと握りしかいない。でも結局どれだけ期待しても、どれだけ祈っても、親が引き返してくる光景を見たことは俺は終ぞ無かった。
スタスタスタ
職員に花壇の手入れの手伝いを頼まれた俺が、子供部屋に飾る向日葵を一本担いで戻ってきた時、アイツとあの子は、木の下で寝てた。
三時間は経っていただろうか。帽子を被っていると言っても、頭上にはサンサン照りの太陽。晒された肌はほんのりと赤くなり、じっとりとした汗をかいていた。ただでさえ風が吹いただけでよろめいてしまいそうな体だ。熱中症でぶっ倒れるのも時間の問題だろう。
だとしても別に俺には関係ない。話したこともない他人だ。あいつらがどうなろうとどうでもいい。
普段の俺なら、興味無いとばかりにさっさとその場を後にしていただろう。だが何故かその日だけは目を逸らせなかった。
あまりにも弱々しくて頼りないあいつとあの子の寝顔が妹と重なったからか。そうであったなら、捨てられた俺の行き場の無い想いも少しは報われる気がする。妹だけに与えていた優しさを、他人にも与えられる人間になれるんだ。
笑ったあの子とあいつが笑っていて、目を合わせた瞬間、瞳の中に俺は星の瞬きを見た。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!