別に、特別辛いことがあったとか、そういう訳じゃない。
ただ何となく、息がしずらくて苦しいだけ。
生きていると、苦しいことも辛いことも沢山ある。
私には、特別生きる理由もやりたいことも、ましてや好きなことなんて何も無くて。
...だから、生きる理由も目標も無いのなら日々を生きる営みには何の意味も無くて。
ただ苦痛が待っているだけの人生だと言うのなら、
と、本当に心からそう思う。
けれど、それでも私は、痛いのは嫌い。苦しいことも、辛いことも、ぜんぶ全部、嫌い。
だからこそ、消えたいと、死にたいと思うけれど、
自ら命を絶つその行為は、酷く苦しい。苦しくて、辛くて、怖い。
この先の想像も出来ない苦痛が怖くて、嫌で、逃げ出したいのに。その為の唯一の方法には、それ以上の恐怖と苦痛が伴う。
だから。
結局、自ら命を絶つ勇気なんて私には無くて。今もまだ生き永らえてる。
思って、ズルズルと壁に背を預けて座り込む。
いっそ、いっそ誰かが殺してくれたら良いのにと願ってしまう。死にたいのに、怖くって、出来なくて...そんな自らに嫌気がさして、ため息をつく。
もうとっくに日が落ちて、明かりも付けずに居たせいで真っ暗な室内で玲亜は膝を抱え込んだ。
こつりと膝に頭を乗せて、そう言えば最後に食べたのは何時だったかな...なんて考えた。
飢餓は嫌いだ。苦しくて、辛いから。餓死なんてしたら、その過程は酷く長くて辛いんだろう。
それは、いや...
思って玲亜はゆるゆると立ち上がって冷蔵庫の元へ歩く。
明かりがなくても冷蔵庫は薄暗く光を放つから場所は分かるし、夜目は効くほう。
ガチャリ、音を立てて開けた冷蔵庫の扉。その中身に玲亜は静かにため息をついた。
そう言えば、前に食べた時...丁度一日前くらいに今度買えば良いかと考えたことをふと思い出した。
チラリと壁に掛けられた時計に目をやれば、時刻は21時を回った辺り。この時間なら補導はされないし、服装次第では大学生とやり過ごせる。
そろそろ食べないと、苦しくなる。
クローゼットからダッフルコートを取り出して、ニットのワンピースの上から羽織る。その上からマフラーを巻いてスマホと財布をコートのポケットに入れれば外出準備の完成。
人よりは、かなり寒さに耐性はある方だけれど。それでもこの時期の夜はかなり冷え込む。体調を崩すと辛いから、出来るだけ対策はしっかりとして。
そうやって、小さく呟かれた彼女特有の玲瓏な声が、静寂に響いて霧散する。返る言葉は無い。
リメイク前