本に目を向けたまま、俺は小さなため息をついた。なんとか夢だと思い込むため、気のせいだと思い込むために、必死に文字を追ってみるが、
諦めて本を置き、後ろでニコニコ突っ立っている涼架が目に入ると、さらに深いため息が出た。
なんででしょう、と返されて終わった。
俺がさっきまで読んでいた本を取り、不思議そうな顔をする。なんだ、俺は本を読んだらダメなのか。
いつも、戦いはいやだー、平和に平和に、って涼架が、俺に勝負をしかけてきた。
あの顔、絶対に何かを企んでいる。
コイツは、俺を舐めているのか?
いや、待てよ。
涼架を魔法で殺すのは簡単じゃない。じゃんけんで、涼架を追い払えるなら、いいんじゃないか?
精神操作、そこまで上手いわけではないが、相手の手を動かすくらいならできる。小指薬指親指を曲げるだけだ。
グーは麻痺系、加減を間違えればバレる。チョキ、二本だけ神経に魔力流せばいいから、バレにくい。
パーはチョキと同じことを5本やらなきゃいけない。チョキならやりやすい。
ガシッッ
手首に激痛が走る、見てみれば涼架の手がとんでもない強さで手首を圧迫していた。
涼架が俺の手に指をあてると、人差し指と中指が開いた。
くそ、全部コイツの手のひらの上かよ、












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!