第7話

普通に見えるのが,一番おかしい
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2026/01/02 01:50 更新
最初に気づいたのは,クラスだった
「最近さ、スンミン変わったよね」

 昼休み。
 誰かの小さな声。

「前より静かじゃない?」
「でも、元気そうじゃね?」

 そう。
 元気そうだった。

 笑わなくなったわけじゃない。
 誰かと話さなくなったわけでもない。

 ただ――
 必ず、リノの視界にいる。

 席。
 廊下。
 移動教室。

 距離は一定。
 近すぎない。
 でも、遠くもない。

「偶然じゃないよな、あれ」
「え、あの二人仲悪くなかった?」

 スンミンは、その声を聞いていた。

 でも、振り向かない。

 リノが、後ろにいるのを知っているから。
リノ
リノ
スンミン
呼ばれる。
 それだけで、体の力が抜ける。
リノ
リノ
次,移動
スンミン
スンミン
分かってる
説明はいらない。
 歩き出すタイミングも同じ。

 それを見ていたクラスメイトが、眉をひそめる。

「……付き合ってんの?」
「いや、あの空気は違う」

 違う。
 スンミン自身が、一番分かっている。

 これは恋人じゃない。
 でも、友達よりずっと深い。

 移動中、スンミンが足を止める。
スンミン
スンミン
なあ,リノ
リノ
リノ
スンミン
スンミン
周り,気づいてる
リノは少し考えてから答えた。
リノ
リノ
問題ある?
スンミン
スンミン
…ないの?
リノ
リノ
お前が困るなら調整する
その言葉に、スンミンは詰まる。

 困っていない。
 むしろ――
スンミン
スンミン
俺,楽なんだよ
口から、自然に出た言葉。

 自分で言って、少し驚く。
スンミン
スンミン
考えなくていい,選ばなくていい
スンミン
スンミン
リノがいるから
リノは、ほんの一瞬だけ目を細めた。

 喜びもしない。
 でも、否定もしない。
スンミン
スンミン
それだけでいい
ただ、それだけ。

 放課後。
 下校途中。

 知らないクラスメイトに呼び止められる。

「スンミンさ」
「最近、リノとばっかじゃね?」

 言い方は軽い。
 でも、探る目。
スンミン
スンミン
別に

「ふーん……」

 その瞬間。
リノ
リノ
用,ある?
 リノが、間に入る。

 声は低く、穏やか。
 でも、逃げ場がない。

「いや、特に……」
リノ
リノ
なら,邪魔しないで
 笑っていない。
 怒ってもいない。

 ただ、境界線を引いただけ。

 相手はそれ以上、何も言えなくなった。

 歩き出してから、スンミンが小さく言う。
スンミン
スンミン
さっきの,やりすぎじゃない?
リノ
リノ
必要な線引き
スンミン
スンミン
俺のため?
リノ
リノ
俺のためでもある
正直すぎる答え。
リノ
リノ
奪う気はない
リノ
リノ
でも,割り込まれる気もない
淡々とした声。

 スンミンは、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。

 守られている。
 でも、閉じ込められてはいない。

 ――逃げられるはずなのに。

 逃げたいと思わない。

 家の前。
リノ
リノ
明日も,同じでいいか
リノが聞く。

 “いい?”
 ちゃんと、選択肢を残してくる。

 スンミンは、少し考えてから答えた。
スンミン
スンミン
…うん
リノ
リノ
了解
それだけ。

 帰宅後。
 ベッドに倒れ込んで、天井を見る。

 周りは言うだろう。

 おかしい。
 普通じゃない。
 依存だ。

 でも。

 こんなに静かで、
 こんなに安定していて、
 こんなに安心できる関係を、
 他に知らない。

 スマホが震える。

【無事着いた?】

 短いメッセージ。

【うん】

 すぐに返す。

【なら、今日はそれでいい】

 それだけ。

 束縛もしない。
 命令もしない。

 なのに――
 世界の中心が、そこにある。

 スンミンは、目を閉じて思った。

 これはもう、
 誰かに止められて終わる話じゃない。

 静かに、
 選び続けて、
 深く沈んでいく物語だ。

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