私の顔を見下ろしたMt.レディは目を大きく開け、ぴたりと止まった。
そして、
『ガシッ』
両手で頬を挟まれた。
私がそう言うと、3人は私と一緒に走り出してくれた。
私は遅れないように3人の背を追い掛けていく。
その時だった。
弱々しい叫びが潤んだ声。
私の目は声を発した本人に釘付けとなった。
迷子になった様子の幼い男の子が綿菓子の入った袋を片手に、屋台の前をうろうろとしている。
余所見をしながら友人と話していた若い男が、
『ドンッ』
屋台の前でうろうろしていた幼い男の子にぶつかった。
その瞬間、屋台から受け取った丼を手から滑らせる。
その真下には
その幼い男の子が。
咄嗟に両腕を十字にして自分の身体を庇う、幼い男の子。
落ちていく丼に手を伸ばす屋台の人。
顔を歪ませ、何とかしようと試みる、ぶつかった若い男。
幼い男の子に降り掛かる熱湯が…
小さな身体を必死に自分で守ろうとする姿が…
助けを求めて、『お母さん』と口にした事が…
つい、
あの時に見た、
幼い轟くんの姿とリンクしてしまって────
『ズザザッ…』
見ているよりも先に、
『ビシャァッ……』
身体が動いていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。