第13話

身体が動いていた
7,582
2020/03/28 17:00
私の顔を見下ろしたMt.レディは目を大きく開け、ぴたりと止まった。


そして、

『ガシッ』

両手で頬を挟まれた。
あなた

?!

Mt.レディ
…ね、名前は?
あなた

え??

Mt.レディ
なーまーえ!
あなた

…きっ、木奥 あなたです。

Mt.レディ
あなたちゃん!可愛い名前!絶対売れるよ、あなたちゃん!
あなた

『売れる』?

デステゴロ
おい、こんな場所でスカウトするな。
Mt.レディ
良いじゃん、別に!良かったら卒業後でもインターンでも、私の事務所に来ない?! あなたちゃん、超可愛いし!
あなた

いや、私は…

シンリンカムイ
ところで、君は…2年生か?
あなた

いえ、1年生です。

シンリンカムイ
1年生?!1年生って事は…
デステゴロ
今から出場じゃないか!
Mt.レディ
嘘!急がないと!そういう事は早く言ってよ、あなたちゃん!
あなた

あ、えっと、すみませ

デステゴロ
謝ってる時間が勿体ない!早く会場に向かうぞ!
シンリンカムイ
いや、会場より控え室だ!
Mt.レディ
いやいや〜、女の子にはお着替えがあるんだし、更衣室でしょ?
あなた

えっと…まず相澤先生の所に行こうかと…

私がそう言うと、3人は私と一緒に走り出してくれた。
私は遅れないように3人の背を追い掛けていく。


その時だった。
男の子
お母さん…お母さん…っ!
弱々しい叫びが潤んだ声。

私の目は声を発した本人に釘付けとなった。
男の子
お母さんっ、何処っ…?
迷子になった様子の幼い男の子が綿菓子の入った袋を片手に、屋台の前をうろうろとしている。
でさぁ、昨日のオールマイトの特集が神すぎて思わず撮っちゃって。
マジ?俺も撮りたかったんだけど!
屋台
はい、出来たよ!熱いから気をつけて!
いや、あれは撮らないと損だっ…て、うぉっ?!
屋台
あっ!!!

余所見をしながら友人と話していた若い男が、



『ドンッ』



屋台の前でうろうろしていた幼い男の子にぶつかった。


その瞬間、屋台から受け取った丼を手から滑らせる。




その真下には
屋台
危ない!


その幼い男の子が。


男の子
お母さんっ…!
あなた


咄嗟に両腕を十字にして自分の身体を庇う、幼い男の子。

落ちていく丼に手を伸ばす屋台の人。

顔を歪ませ、何とかしようと試みる、ぶつかった若い男。




幼い男の子に降り掛かる熱湯が…


小さな身体を必死に自分で守ろうとする姿が…


助けを求めて、『お母さん』と口にした事が…


つい、




あの時に見た、





幼い轟くんの姿とリンクしてしまって────










『ズザザッ…』
男の子
っ…!!
屋台
見ているよりも先に、



『ビシャァッ……』
Mt.レディ
?!
デステゴロ
?!
シンリンカムイ
?!
あなた

っ…






身体が動いていた。


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