第20話

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2025/12/25 12:43 更新
中原中也
案外冷静なんだな。


今部屋に入ってきたであろう中也の言葉に私は窓から目線を動かした。


.太宰治
このくらいで動揺していたらポートマフィア幹部は務まらないよ。

中原中也
……首領は、あなたさんは一週間は目を覚まさないだろう、って。

.太宰治
……そう。


執務机と向き合い仕事をする手を休めない私に中也はため息をついた。


中原中也
冷静ではあるが……動揺はしてんだろ。

.太宰治
何か言ったかい?

中原中也
……何でもねぇ。俺はもう行く、芥川が外で待ってるから入れてやれ。


その言葉と共に入れ替わりで芥川君が入ってくる。

ガチャンと言う音と共に重い扉が閉まる音がした。


芥川龍之介
……太宰さん、

.太宰治
何の用だい?見ての通り私は今忙しいんだ。まさかこの間の任務のことを謝罪しに来たのなら帰り給え。あれは別に君のせいではないよ。


書類から顔を上げずにそういうと芥川君は一瞬言葉を詰まらせた。


芥川龍之介
……あなたさんの見舞いにくらい行け、と尾崎幹部が。

.太宰治
……後で行く。

芥川龍之介
……太宰さん、顔色がよろしくないように見えます。

.太宰治
溜まりに溜まりまくっていた仕事をしたらこうなっているだけだ。君には関係ない。

芥川龍之介
ですが…

.太宰治
君は私に発砲されたいのかな?用件が終わったのならさっさと帰れ。


強い命令口調で言えば今度こそ芥川君は静かになった。


芥川龍之介
……っ、

尾崎紅葉
太宰、動揺しているからと言って部下に当たるのはどうかと思うぞ。

.太宰治
……姐さん。


その声に私は思わず書類から目線を上げた。

扉を開ける音が聞き取れなかったのは流石の身のこなしと言ったところか、何て場違いなことを考えると姐さんはため息をついた。


尾崎紅葉
……太宰、今すぐあなたの見舞いに行け。

.太宰治
……だけど…

尾崎紅葉
だけど、ではない。これはわっちからお主への命令じゃ。


相棒と部下に心配されるのでは起きたあなたに笑われるぞ。

そう言いながら私の方をじっ、とみる姐さんは私がこの書類の手を止めてこの部屋から出ない限り居座り続けるだろう。

隣で私のことを見ている芥川君も、姐さんの圧には逆らえないだろう。というかもともと彼も私のことを休ませたいと思っているのだ、逆らう理由がない。


.太宰治
……わかった、行けばいいんだろう?


諦めて私は書類から手を放し立ち上がった。

それでいいのじゃ、と言う姐さんの隣をすり抜け、私は重い足を進めながらあなたさんが居る部屋へと向かった。

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