ヨコハマのとある一つのアパート。
特に厳重なセキュリティもなく、ごく普通なその建物の前を太宰は見上げた。
外から中へとつながる階段を4階まで上がり、太宰は404と書かれた部屋の前でピッキング用のピンを取り出す。
カチャリ、と数十秒かからずに開いたその扉の奥から感じられる強烈な血の匂いに太宰は無表情で中に入る。
そこにはあちらこちらに死体が散らばり、拷問した後のような血だまりがあちらこちらに広がっていった。
壁にまでべったりとついたそれは幾日か前のモノなのか腐敗した匂いまでしていて普通の人間なら卒倒しているような惨状だ。
そんな中優雅にソファの上でコーヒーを飲んでいる森に太宰は冷ややかな笑みを浮かべた。
困ったような表情を浮かべる森のその言葉の意味も太宰はよくわかっていた。
有馬祐樹、そして水野愛。
この事件の裏に居る二人がポートマフィアを脅かす存在であることはわかっていることである。
だから一先ず生きていることを敵方にはもちろん、味方にも公言はせず、ひたすらに身を隠す。
それが森が導きだした最適解だった。
飲んでいたコーヒーを机に置き、森は目の前で只一人生きている男にナイフを突き刺しているあなたを見た。
ゆらり、と立ち上がった彼女は目に真っ暗なハイライトを写し、只冷たい無表情を浮かべていた。
久しぶりに見たあなたのその表情に太宰は表情を変えずに彼女の持っていたナイフを渡せるように手のひらを差し出した。
だがあなたはそれを無視し、ナイフ持った自分の手を見つめ、そして太宰を見た。
あなたはそう言いながら太宰の胸元にドサリ、と倒れこんだ。
ゆっくりと目が閉じられていき、完全に体重を太宰に預けたあなたから規則正しい寝息が聞こえてくる。
その姿にはぁ、とため息をつきながらも太宰はほんの少しだけ口角を上げた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。