壱岐邸(not 和風建築)にて。
さあ、上がって
えっ! ひよりちゃん、警戒心なさすぎでは……?
?
君、女の子でしょ?
いや、そうじゃなくて……あ、いや、私女の子だけど
私、妖化しているんだよ?!
普通、危険だと思わない?!
そんなことを思いつつ、ひよりちゃんの自室に案内される。
おじゃまします……
ひよりちゃんが「パタン」と静かに自室の扉を閉めた。
そうだ、助けてもらったんだし、私がひよりちゃんの名前を知っていた理由を教えなきゃな。
色んな知り合いの神様のところへ私を連れて行って元に戻す方法を訊ねたり、一緒に逃げてくれたりした。
この子には多大な恩がある。
ひよりちゃん。
これから私がなぜひよりちゃんの名前を知っていたのか話そうと思うんだけど
!
……うん
私、死ぬ前の記憶があるんだ。と、いっても前々世のだけど。
えっ! 前々世って……。
私のこの体での死ぬ前の記憶を前世と呼んでいるから、前々世。
普通に、私の死ぬ前の記憶はないよ。
…私の前々世は、夜トの物語が漫画として人気があったんだ。
「ノラガミ」っていう漫画なんだけど。
夜トが漫画に?!
いきなり情報量多いよ…
だよね、あはは…
コホン。つまり、私はこれからひよりちゃんたちに起こる未来のことを知っている
未来……
藤崎、って知ってる?
!
ひよりちゃんは、顔が朱くなった。
怒りゆえか、照れゆえか……いや、怒りだな。
実はあの人、夜トのお父さんなんだよね
えっ?! 何言って……
マイナー神って、人から忘れられちゃうと消えるでしょ?
ずっと人間に神憑って、夜トの消滅を防いだり、そもそも願って夜トを誕生させたのも藤崎……の中にいる神様。
ま、もともとは人間で、祀られて神になったらしいけど。
ウソでしょ……
……あの人、夜トとひよりちゃんが仲いいのが嫌みたい。
このままじゃ、ひよりちゃんにこれから危害を加えてくるよ。
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