ぴーんぽーん
それにしても一軒家で一人暮らしってすごいよな。
1人でなんでもするってことでしょ?
しっかりしてるんだろうな。
やっぱりしっかりしてねぇわ。
どうでもいいことを喋りながら通学路をダラダラと歩く。
綺麗なビー玉みたいな飴をこちらへ投げてきたのでありがたくもらって口に入れる。
びびくんのほっぺたが膨らんでいたのはそういうことだったのか。
靴を履き替えてびびくんをみると、何やら学校の地図と睨めっこをしていた。
それ見て教室確認する人初めて見たんだけど……。
まだ5月なのに!?
ていうか俺たちこの学校来て1年たってるはずだけど。
まだ覚えてないのかな。
だろうな。
わかりにくいもんな。
お前は一体何をしでかしたんだよ……。
よっぽどのことしたんだなあ。
適当にクラスメイトの相手をする。
追い抜いていったクラスメイトをぼんやりと眺めながら飴を軽く噛む。
そろそろ教室だから食べちゃお。
がり、と飴に歯を立てて思い切って噛み砕く。
飴の中心からどろっとした液が溢れてきて舌を撫でる。ハチミツかなんかだろう。
びびくん、くれたのはいいんだけど甘すぎるよ。
自分の席にカバンを引っ掛けて水筒を取り出した。
冷たい麦茶を喉に流して甘さを薄めていく。
それから黒板に書かれた落書きを見てみたり、クラスメイトたちとさらに落書きを重ねたりして時間を潰す。
こうやっているときは1人だとは感じないのに不思議なもんだ。
このあいだみたいに暗い夜になると一気に不安になる。
あれが俗にいう「病み」というやつなのだろうか。
とりあえず気分はよくない。
ああやって反省しまくっても次の日にはなりたい自分になれないままなのだから。
きーんこーんかーんこーん
あれ、結局空は帰ってこなかったな。
だいぶ時間食うな、?やばいやつだなぁ。
なんだろう、とドアの方に視線をやる。
入ってきたのはちょうどいま心配してやっていたふわふわとした髪の少年だった。
先生とコントじみたことをしてクラスメイトの笑いをとっている。
そんな風景がコマ送りのようにゆっくりと流れていく。
頭が真っ白になって、ぽかんとあいた口は塞がらない。周りから見た俺はいまめちゃくちゃアホみたいな顔してるんだろうなぁ。
ただ、いまクラス全員空の方を見ているので俺のあほ面は見えてないだろう。
そうか、転入生だったのか。
だから寮の位置も職員室の場所も俺の名前も知らなかったのか。
俺自身が空の名前を知らなかったのも、覚えてなかったからじゃないのか。
なんなら朝俺と一緒に登校したのも道がわかんなかったからなのかもしれない。
あと、本当は昨日来る予定だった?
昨日俺はあいつに早退させられたんだけど、あいつ転入初日に早退したってこと?
朝に?クラスメイトとも会わずに?
いかれてるだろ、俺なんて放っておけばよかったのに。
頭がぐるぐるして目の前の先生が何を言っているかもよくわかんない。
その元凶の空は俺を指差して、何やら先生と話している。
それからなぜか近づいてきた。
うちのクラスは男子と女子を交互に配置しているはずなんだけど。
何それ何それ何それ!!!
ねえ待って、俺の拒否権は?拒否はしないけど一旦俺に許可取ろうよ。
なんでこんな変な展開になるのさ!!
もうほんと意味わかんない!!!
朝学活後、当然空はクラスメイトに囲まれている。
そして俺はというと……。
あの馬鹿のせいでこっちも質問攻め!!
そりゃそうなるだろうな!!誰も空なんて知らないのに謎に既に仲良いやつがいるんだもんな!!
ひょこっと入ってきた空。よく見るとかこってるのは男子より女子の方が多いようだ。
いや寮もある意味家ではあるだろ。
たくさんのクラスメイトに囲まれて笑っている空をぼんやり眺める。
っあー、
わかっちゃった。
そうか、あいつ陽キャなんだ。
じゃあすぐ友達できて俺から離れてくんだな。
ぼうっと混乱の中で確かにそう思った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。