このチャンスを見逃せない……!
頭を下げる私を見て一瞬もの言いたげな顔をした後、仕方なさそうに重衡さんがこちらに背を向けた
___夕刻はあっという間にやってきた
ピリついた雰囲気の中私はというと__
まだかな…早くみたい…!本場の刀捌き!
どんな剣術が出るのだろう。どんな美しい舞いが見れるのだろう。どんな戦いなのだろう。どうやって相手を叩き落とすのだろう。
などと、仕事の癖が出ながら少しわくわくしていた
傾いた陽の差し込む簡素な稽古場に、重衡さんと共に足を踏み入れると
既に直家さんと他の武士達は中で待ち受けていた
確かに…にこにこと敵意剥き出しの敬語より正面から来てくれた方が助かるよね
負けセリフってやつじゃない?あれ。なんだっけ…そう、死亡フラグってやつ
…あともし重衡さんが負けたとして…いや有り得ないだろうけど。
まぁ、そのもしがあったとしても私で遊ぶことは私が許さないけどさ?
すると横合いから、重衡さんがぐいっと私の肩を押す
ほら、やっぱり、優しいのね
重衡さんの言う通り、壁際に下がる
不器用な優しさが微笑ましくて、余計なお世話をかけたくて、去っていこうとする重衡さんに言葉をかける。
足を止めた重衡さんを見上げていると_
…ぇ
不機嫌そうな顔のまま、その両手が私の頬を包み……
頬をむにっと軽く引っ張られて思わず声が漏れる











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!