その声に、部屋の中にいた全員の視線が一箇所に集まる。そこにはちょうど部屋に入って来たらしい入真がいた。その表情は若干焦りを滲ませている。蘭の声が聞こえて慌てて駆けつけたのだろう。
ほっと安心したような表情を浮かべると、そのままベッドサイドまで歩いてきて、優しく蘭の頭を撫でた。その優しい手つきに、蘭も気持ちよさそうに目を細めるが、すぐにハッとして「いるま!」と声をかける。
蘭が必死に言葉を紡ぐと、入真は驚いたように目を丸くしてから小さく笑った。その反応に蘭は首を傾げる。
優しい声で入真は蘭の言葉を遮った。そのままゆっくりとした動作で蘭の額に自身の額を押し当てる。
入真の言葉に蘭は何度も頷きながら涙を零した。そんな蘭を慰めるように入真はそっと抱きしめると、背中を優しく叩く。まるで泣き止まない子供をあやすかのように。
その様子を見守っていた4人も安堵したのか、緊張が解けたように大きく息を吐き出した。
小雨の予想に反して、思ったよりも殺気立った入真に小雨は焦る。それにドッと笑いが起り、部屋は和やかな雰囲気に包まれた。
そんな笑いにつられ、蘭の涙もいつの間にか引っ込んでおり、気づいた時には楽しそうに笑っていた。そんな蘭を見て入真は一瞬だけ目を見開くと、優しく微笑む。そしていつものように、蘭の頭を撫でてくれた。
そう、すべてはいつも通りに戻ったと思われたのだ。だが、蘭は密かに決意を固めていた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!