第3話

唯一のひと
61
2026/02/28 17:57 更新
ポートマフィアの廊下。
任務終わりの、まだ火薬の匂いが残る夜。
太宰 治
あなたの下の名前ちゃん、手、出して
あなた
……なんで?
太宰 治
怪我してるでしょ
あなた
してない
太宰 治
嘘。さっき庇った
あなたは小さくため息をついて、渋々手を差し出す。

治はその手首を軽く掴んで、じっと見る。
太宰 治
ほら。かすり傷
あなた
これくらい平気
太宰 治
平気でも、私は嫌だ
その声音が少しだけ低い。

あなたは目を逸らす。
あなた
……過保護
太宰 治
あなたの下の名前ちゃん相手にはね
その時。
中原 中也
……おい
背後から、聞きなれた声。
中原 中也
廊下でいちゃついてんじゃねぇよ、青鯖
あなたが振り返ると、中也が腕を組んで立っていた。
太宰 治
いちゃついてない
中原 中也
してるだろどう見ても
治は振り向きもせず、あなたの手を離さない。
太宰 治
中也、嫉妬かい?
中原 中也
するかアホ
太宰 治
あなたの下の名前ちゃん取られるの嫌なんだろ?
中原 中也
取らねぇよ!!
あなたは小さく笑う。
太宰 治
中也、顔赤い
中原 中也
赤くねぇ!
治はくすっと笑って、ようやく中也を見る。
太宰 治
中也は優しいからね。あなたの下の名前ちゃんがいなくなったら泣くよ
中原 中也
泣かねぇわ
太宰 治
じゃあ私がいなくなったら?
中原 中也
……清々するな
太宰 治
ひどいなぁ
あなたは治の袖を軽く引く。
あなた
治、からかいすぎ
太宰 治
事実を言ってるだけさ
中也は舌打ちして、二人を見る
中原 中也
お前ら、バレバレだからな
あなた
何が?
あなたが首を傾げる。
中原 中也
付き合ってんの
一瞬、沈黙。

治は平然と答える。
太宰 治
そうだけど?
中原 中也
隠す気ゼロかよ!
あなたは少しだか頬を染める。
あなた
……別に、隠してないし
中原 中也
はぁ!?お前ら自覚あんのか?任務中も距離近ぇし、視線うるせぇし
太宰 治
視線がうるさいって何だい
中原 中也
青鯖の目が甘いんだよ
治はわざとらしく目を細める。
太宰 治
あなたの下の名前ちゃん限定だけどね
中原 中也
言うな!!
あなたは治の腕を軽く叩く。
あなた
治、恥ずかしい
太宰 治
何が?事実だろう
あなた
……そういうとこ
中也は呆れたように息を吐く。
中原 中也
まあいいけど。泣かすなよ
治の表情が一瞬だけ変わる。
太宰 治
泣かせないよ
低い声。
太宰 治
あなたの下の名前ちゃんは、私のだから
あなたの腎臓が高く鳴る。
あなた
……所有物みたいに言わないで
太宰 治
じゃあ何?
あなた
隣にいる人
治は少しだけ目を細めて笑う。
太宰 治
それ、私の方が嬉しいな。
中也は二人を見て、面倒くさそうに手を振る。
中原 中也
はいはい。さっさと帰れ。夜は物騒だ。
太宰 治
あなたの下の名前ちゃんといるから平気さ
中原 中也
お前が一番物騒なんだよ!
あなたは小さく笑って、治を見る。
あなた
帰ろ、治
太宰 治
うん
治は当たり前のようにあなたの手を取る。
太宰 治
離れないでね、あなたの下の名前ちゃん
あなた
離れないよ
その言葉は、何の疑いもなく交わされた。

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