第2話

いつもの日常
51
2026/02/27 09:38 更新
薄暗いポートマフィアの一室。
夜の気配が、ゆっくりと部屋に滲んでいる。
太宰 治
……あなたの下の名前ちゃん
不意に呼ばれて、あなたはペンを止めた。
顔を上げると、机にもたれた太宰がこちらを見ている。
太宰 治
今日の任務、退屈だったね
あなた
……治は、そうだろうなって思ってた
太宰 治
酷いな。私は割と真剣だったよ。
あなた
さぼってたよね
太宰 治
ばれたか
太宰は小さく笑って、あなたの机の横に腰を下ろす。
太宰 治
でもさ、あなたの下の名前ちゃんが隣にいると、時間が早くすぎる
あなた
……それ、褒めてる?
太宰 治
もちろん。私なりにね
あなたは少し困ったように笑う。
あなた
治の“褒め言葉”は、分かりにくいよ
太宰 治
分かりにくい方が、印象に残るだろ?
あなた
……そうだけどさ
太宰はあなたの手帳をちらりと覗く。
太宰 治
また日記?
あなた
うん。夜のこと、忘れたくなくて
太宰 治
ふうん……あなたの下の名前ちゃんらしい
あなた
変かな?
太宰 治
いいや。静かで、弱くて、すぐ消えそうで
あなたの指が一瞬止まる。
あなた
……消えないよ
太宰 治
本当に?
太宰は冗談めいた口調なのに、目は笑っていない。
太宰 治
私の前からいなくなったりしない?
あなた
……急に、どうしたの?
太宰 治
なんとなく
太宰は肩をすくめる
太宰 治
あなたの下の名前ちゃんはさ、私が見ていないと、どこかへ行ってしまいそうだ
あなた
……そんなこと、ないよ
太宰 治
じゃあ約束して
あなた
何を?
太宰はあなたをまっすぐ見て、静かに言う。
太宰 治
いなくなる時は、ちゃんと私に言うこと
あなたは少し迷ってから、頷く。
あなた
……はい
太宰は安心したように、ほんの少し笑う。
太宰 治
よし。それなら今夜も安心だ
あなた
今夜?
太宰 治
散歩。昨日言ってたでしょ?
あなた
……覚えてたんだね
太宰 治
あなたの下の名前ちゃんのことは、忘れないよ

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