第68話

憤怒の罪
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2025/09/26 00:58 更新
俺が生まれた国は、長いこと隣国と戦争をしていた場所で、自然とソウイウことを学んで生きていた
銃の扱い方、爆弾の作り方。兵士としての心得。人の殺し方。様々なことを学んだが、結局のところ行き着くのは「国のために戦い死ねる兵士」としての教育なのだろうと幼いながらに理解していた
それでも兵士として歩もうと思ったのは、勿論 愛国心はあったし、一族が代々兵長として戦争に携わるということもあったが、一番は家族のため、そして俺を信じて着いてきてくれる兵士たちのためだった
俺が一言発せば、その通りに動いてくれる兵士。その中には子供だと侮っていた者がいたのか、一歩出遅れる奴がいたが、そういう奴ほど戦場で死んでいった
どうやら俺には「才能」があったらしい。戦場でしか役に立たない、戦争の才覚が。それにより、兵士は俺に従えば勝つことを知り、死なないことを理解した
それでも死ぬ者は出たし、その度にその者の顔と名前を覚えていた。重荷になると分かっていても、俺はそれを背負って生きていくのだと誓った
自国が勝ち進むに連れて、上の者はきっとこう思ったのだろう。「戦争が終わり平和になった時、カインドは邪魔になるだろう」と
戦争の才覚がある者が自国にいるだけで、戦争の火種になるし、反逆があるとも限らない。それは俺も覚悟していたことだった
…だけどな、
要らない人
我が国を裏切る反逆者め!
俺の隊に所属していた兵士を裏切り者として俺に殺させた挙句、それを「自隊の兵士を殺した残忍な反逆者」として仕立て上げて、俺を始末する理由づくりにすることは、度が過ぎると思った
大切な人
カイ……ド、さ…
俺が殺してしまった兵士の顔と名前を、生涯忘れることは無いだろう。国のためと信じた結果がこれか、と国への落胆と絶望、そしてその国に踊らされた俺への憎悪と…同情の混ざった悲哀が見える、あの表情
どうしようもない怒りが沸いた。兵士を利用してまで自分たちを悪者にしたくない国と、そんな国の犬として取り返しのつかないことをした自分に
イラ
イラ
……頼むから、
しんでくれ。それは一体誰に向けた言葉だったのか、俺自身分からなかった
そうやって頭を抱えて蹲っていた俺に向かって、土を踏みしめる音が近づいて来る。音は一人分で、殺り合うなら相当な手練でもない限り勝てる見込みはあった
だけど、俺はもう誰かを殺す気にはなれなかった
イリテュム
イリテュム
…なら"嘘"にしてやろうか?
そう言った彼女は、俺のことなんて写っていない瞳を向けていて、こちらを見下ろしている
彼女の…イリテュムの言ってることは分からなかったが、コイツがこんな「感情なんてありません」みたいな、兵士として完成された子供の姿をしているのが、酷く気に食わないと思った
イラ
イラ
まずはお前がお前に嘘つくなよ。子供のくせに、壊れちまった顔すんな
イリテュム
イリテュム
…よく、分かったな
逆に周りの奴らは気づかなかったのか。なんて思いながら、俺はコイツのことを放っておけなくなってしまった。目を離した瞬間、向こうから関わったことなんて忘れて消えちまいそうで、さっきまでの怒りも沈んでいった
そこからはイリテュムに着いて回るようになった。アイツは人を救っていったが、全員に慈悲を与えるのでは付け上がられるだけだと、辞めさせた
その中でも、悲惨な末路を辿っていた者…アイツらを拾い上げて、一緒に行動して、いつの間にか 俺たちは家族のような関係になっていた
怒って笑って泣いて楽しんで、起きて食べて遊んで寝る。それは学園に入った後、常に一緒に行動することは無くなっても、変わらずだった
アイツらのことが好きだと、大切だと実感していく中で、あなたの名前(カタガナ)のこともその枠に入れるようになって、守りたいと、幸せになってほしいと願っていた
(なまえ)
あなた
ッイラさ…っ、カイ、ンド、さん…っ
…結局、俺はあなたの名前(カタガナ)のことを言葉で傷つけて、アイツらは守るために身を犠牲にして、イリテュムを独り残してしまう
叶わない夢ってのはあるが、ようやく幸せになれる奴らが転落していく様ってのは、そんなに面白いのか?いるかも知らない神様よォ
こういう結末を迎えていくンなら、大切で大好きな奴らに、幸せであってほしいと願うのは、間違いだったってことだろ
なら、敢えてそれに逆らってやるよ。俺は自国からも女王様からも認められた反逆者だからな
リドル
リドル
この僕に逆らおうってのかいッ!?監督生を僕に渡すんだッ!
イラ
イラ
大切龍の宝物に手を出した奴の末路なんざ、遥か昔から決まってんだよ】
竜の逆鱗って言葉、知ってるだろ。これ以上暴れ狂う前に、さっさと撤退した方が身のためだぞ
イラ
イラ
【愛されるよりも、恐れられる方がずっとマシだッ!そこになおれッ!!】
怒りを燃やせ。でないと あなたの名前(カタガナ)はアリスに、イリテュムは反逆者にされてしまうぞ。それが嫌だから立ってるんだろう、反逆者ッ!

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