第25話

*Happy Birthday<憤怒>
72
2023/12/22 12:40
<ユニオンバースデー>
イラ
イラ
……意味分からん
リドル
リドル
それは僕もだよ
ユニオンバースデーの衣装を身にまとい、ハーツラビュル寮の談話室の椅子に胡座をかいて座っている
イラ
イラ
…"魔法のバースデーダイス"だったか?まさか幸運を運んでくる相手がお前とは、こりゃ何の嫌がらせだよ
リドル
リドル
…君は何故、そのような憎まれ口しか叩けないのか。とても疑問だよ
普段からもバチバチな二人が、他が干渉出来ないこの空間に入れられ、まともに出来るか不明だった
リドル
リドル
このインタビューは、学園に代々続く伝統行事。1秒たりとて無駄にすることは許されない
リドル
リドル
早速始めるよ
イラ
イラ
……あー、了解
だが今回ばかりは早く終わらせたいのか、あまり衝突せずに、リドルはプレゼンターの仕事を始めた
リドル
リドル
早速だが、これが僕の用意したプレゼントだ。開けてみてくれ
イラ
イラ
……ん
リドルから受け取った箱を手に取り、イラは暫く外観を眺めた後に中身を確認した
イラ
イラ
……は
箱の中身は、美味しそうなスイーツが詰められていた
リドル
リドル
…君の好みをあまり知らないから、グラたちに聞いてみたんだ
リドル
リドル
そうしたら、イラは甘いものが好きだと言われて…トレイに頼んで、美味しいスイーツ店を聞いて取り寄せたんだけど…
リドルがそのプレゼントを決めた経緯を伝えるが、イラはプレゼントを見たまま動かない
それを見てリドルは間違えたのか?と考え込むが、次の発言で杞憂だったことが分かった
イラ
イラ
…どーも
リドル
リドル
!?…あ、あぁ
素直にお礼を言ったのも驚いたが、甘いものが好きという意外なことで反応が若干遅れていた
リドル
リドル
…コホン。それでは、インタビューに移らせてもらうよ。最初の質問は……
リドル
リドル
"無人島に1人連れて行くなら、誰を選びますか?ただし、同じ寮の生徒は除く"…だそうだ
突拍子のない質問に、イラは一瞬顔を顰めさせて考え込む。意外にもきちんと答えようとしているようだ
イラ
イラ
……イリテュム
リドル
リドル
ほう。それはまたなんでだい?
イラ
イラ
…まぁ、あいつはちゃんと俺を理解してっからな。気楽でいい
イラ
イラ
それだけだ
何処か目を泳がしながら答えるイラに、何か他に考えがあるのだが、事情があり言わないのだろうと、リドルはそれ以上踏み入れることはなかった
リドル
リドル
…それじゃあ次の質問に移るよ
リドル
リドル
"もしハーツラビュル以外の寮に入ることになったら、どの寮を選びますか?"
イラ
イラ
……
これまた考え込んでしまったイラに、リドルは内心頭にクエスチョンマークを浮かべる
だって、最初に闇の鏡に選ばれた時、散々文句を言ってきたというのだから、何か他に行きたい寮でもあったのでは?と考えていたのだ
イラ
イラ
…あー、イグニハイド?
困ったような顔をしながら、イラは決めた
リドル
リドル
それまたどうして?
イラ
イラ
あそこって、あまり関わって来ようとしないだろ?…だから
これもまた、イラの思っている回答ではないのだろうと、リドルは一つため息を吐いた
リドル
リドル
それは本心かい?本当は何処がいいんだ
イラ
イラ
…答えにならねぇから、いい
リドル
リドル
それでもいいよ。さっきの回答はそれとして、君の本心を聞かせてほしい
リドル
リドル
…僕が揶揄う材料としてもね
イラ
イラ
…お前本当に幸運を運んでくれんのか?今の発言不幸寄りだろ
ムスッとした様子で、イラは重々しく口を開いた
イラ
イラ
アイツらがいるならどこでもいい
ポツリと吐き出されたそれは、イラの貴重な"デレ"であった。まぁ、その直後に怒り散らしたが
リドル
リドル
…君、本当にイラかい?
イラ
イラ
よし潰す
リドル
リドル
冗談だよ
冗談かはさておき、二人がこうして冷静に会話を交えること自体異例なので、通常運転になったイラを見て、リドルは内心ほっとしていた
イラ
イラ
…これでインタビューは終わりだろ
リドル
リドル
嗚呼。お待ちかねの"幸運のギフト"の贈呈だよ
リドル
リドル
プレゼントは汚れないところに寄せておいた方がいいよ
イラ
イラ
……
はぁ、と一つため息を零した後、プレゼントを汚れないようにテーブルの端へと置いた
そして、意を決したように目を瞑り、顔を顰めたままその場で立ち尽くしていた
イラ
イラ
やるならさっさと。後一思いにやれ
リドル
リドル
ふふ。潔いね
イラの覚悟を見たリドルは、パイ(クリーム)の乗った紙皿を手に取る
イラは目を瞑っているので分からないが、相当悪い顔をしてこの状況を楽しんでいるように見える
リドル
リドル
それじゃあいくよ
リドル
リドル
イラ、お誕生日おめでとう!!
ヒュン!という風を切る音と共に、パイはイラの顔面に直撃してベッチャと音をたてた
イラ
イラ
……あま
イラがパチリと目を開けると、パイは紙皿ごと顔面からズリ落ちて地面に落ちていた
イラ
イラ
…さて、やられる覚悟はあるな?
リドル
リドル
え……は!?
リドルが何か言う前に、イラはまだ未使用のパイを取り、思い切り投げた
その時の表情が、とても楽しそうで生き生きしていたのは、今のリドルには知る由もない

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