<ユニオンバースデー>
ユニオンバースデーの衣装を身にまとい、ハーツラビュル寮の談話室の椅子に胡座をかいて座っている
普段からもバチバチな二人が、他が干渉出来ないこの空間に入れられ、まともに出来るか不明だった
だが今回ばかりは早く終わらせたいのか、あまり衝突せずに、リドルはプレゼンターの仕事を始めた
リドルから受け取った箱を手に取り、イラは暫く外観を眺めた後に中身を確認した
箱の中身は、美味しそうなスイーツが詰められていた
リドルがそのプレゼントを決めた経緯を伝えるが、イラはプレゼントを見たまま動かない
それを見てリドルは間違えたのか?と考え込むが、次の発言で杞憂だったことが分かった
素直にお礼を言ったのも驚いたが、甘いものが好きという意外なことで反応が若干遅れていた
突拍子のない質問に、イラは一瞬顔を顰めさせて考え込む。意外にもきちんと答えようとしているようだ
何処か目を泳がしながら答えるイラに、何か他に考えがあるのだが、事情があり言わないのだろうと、リドルはそれ以上踏み入れることはなかった
これまた考え込んでしまったイラに、リドルは内心頭にクエスチョンマークを浮かべる
だって、最初に闇の鏡に選ばれた時、散々文句を言ってきたというのだから、何か他に行きたい寮でもあったのでは?と考えていたのだ
困ったような顔をしながら、イラは決めた
これもまた、イラの思っている回答ではないのだろうと、リドルは一つため息を吐いた
ムスッとした様子で、イラは重々しく口を開いた
ポツリと吐き出されたそれは、イラの貴重な"デレ"であった。まぁ、その直後に怒り散らしたが
冗談かはさておき、二人がこうして冷静に会話を交えること自体異例なので、通常運転になったイラを見て、リドルは内心ほっとしていた
はぁ、と一つため息を零した後、プレゼントを汚れないようにテーブルの端へと置いた
そして、意を決したように目を瞑り、顔を顰めたままその場で立ち尽くしていた
イラの覚悟を見たリドルは、パイ(クリーム)の乗った紙皿を手に取る
イラは目を瞑っているので分からないが、相当悪い顔をしてこの状況を楽しんでいるように見える
ヒュン!という風を切る音と共に、パイはイラの顔面に直撃してベッチャと音をたてた
イラがパチリと目を開けると、パイは紙皿ごと顔面からズリ落ちて地面に落ちていた
リドルが何か言う前に、イラはまだ未使用のパイを取り、思い切り投げた
その時の表情が、とても楽しそうで生き生きしていたのは、今のリドルには知る由もない
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。