バシャ、と水が床にぶちまけられる
正確に言えば、アワリにかけられた水が…である
先程まで笑い声や話し声で満ちていた教室内が、何度か温度が下がり凍りついていた
アワリも笑顔を浮かべたまま固まってしまっており、水が髪を伝って顔を濡らしていた
何処からか小さな笑い声が聞こえ、この状況を作り出した犯人のものだとすぐに分かる
一番に状況を理解したイラは、自身の上着をアワリに被せてから、声の正体を探し出す
それを見てアワリの元へ駆け寄る者や、イラと共にマジカルペンを構えながら捜索する者が出てきた
_ここ一年S組は、言わば特別教室というもので、犯罪者としてここに来た彼ら専用の場所であった
犯罪者であるが故の特別扱いは、生徒に不満を持たせる要因となるだろう
つまりこれは、その特別扱いを受けていることを気に食わない者の犯行ということで
しかも、そのターゲットとして選ばれたのは、この中でも周りのあたりが良いアワリが狙われた
本人が朗らかで懐の深い者なら、犯人を探す周りを止めるだろう。明らかに報復されるのを嫌がっている
するとアワリがイラに向かって歩を進めた
イラはかなり怒っていたようだが、あくまでもアワリの意思を尊重するようだった
それを聞いていた犯人はニヤリと笑みを浮かべた。これで自分はやり返されることもなく安全だと
…だが、忘れていけないのは
彼も特殊な形だが、悪役の集まる学園に招集されたヴィランであり、本物の犯罪者である
いつもの笑顔と口調で、犯人の死刑宣告を下したアワリに、思わず犯人は放心してしまっていた
イラのユニーク魔法。その効果は、目に見えている奴らの動きを任意で止めることが出来る
既にその姿を捉えられていた犯人は、逃げることは疎か、指の一本すら動かすことが出来なくなっていた
ズリズリとスペルに連れられた犯人の腕には、オクタヴィネル寮の腕章がきっちりと付けられていた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!