第2話

船上
66
2026/02/27 10:00 更新
船を運転してくれる人と話をしてから甲板に上がると、負傷者を除いた生徒6名がすでに制服に着替え終わっていた。

こう見ると制服の着こなしに個性が出ているな…。

後から京都に駆けつけられるかは不明だけど、血の使いすぎで保健室に運ばれた屏風ヶ浦帆稀ちゃんにも、一応制服を置いといてある。


船上では一旦自由と言うか、無陀野先生はまだ話をしていないようで、各々好きに過ごしている。

例えば無陀野先生は腕立て伏せならぬ指立て伏せをしている。

例えば四季くんは未だ出っぱなしのツノを消すことにようやく成功して近くにいた矢颪碇くんに自慢した結果、双方喧嘩腰になっている。


そうして船上が騒がしくなってきた中、遊摺部従児くんは無陀野先生に話しかける。


「先生。桃太郎機関と交戦中のところに僕らが行って、大丈夫なんですか」

「仕方がない。教師を含め、他のクラスは実習でいない。それに行くと言っても、お前らは雑務の手伝いだ」


ここで先生が立ち上がる。


「戦場には行かない」

「はァ?戦わないのかよ」

「鬼ごっこも中断させられた上にパシリかよ」


四季くんと碇くんは桃太郎と戦いたいらしい。

このクラス、戦闘部隊志望多いね。

…私の時も、私と馨以外戦闘部隊だったな、そういえば。


「雑務もれっきとした仕事だと思うぞ」

「俺は戦いの実績を積みてえんだよ。黙れメガネ」

「まあまあ。前線を志望するなら、まずは後方支援の大切さを知っておくべきですよ」


碇くんは血の気が多いタイプ。

従児くんは後方支援の大切さを理解しているタイプだね。


「マジで手伝うだけ?」

「そうだ。死体を増やすつもりはない」


四季くんが念押しで確認するけど、今はまだ前線に立たせることはできない。

入学してしばらく鍛錬を積んできたならまだしも、入学初日から戦わせることは学校としてはありえないことだから。


「どーでもいいけど、なんでこんな制服で行くんだよ」


そう言うのは所謂ヤンキー座りをしている漣水鶏ちゃん。


私が移動用に用意した服は制服。

一般の学生が着ているようなもので、羅刹学園のものとは大きく異なる。

デザインが違うのはもちろん、女子が短パンじゃなくてスカートってところとか。


「あの服は目立つ。それと、一般的な学生として振る舞え」

「はァ?何が言いてえんだよ」

「補導されるようなことはするなよ」

「うっせーし!…はっ、もしかして私を心配してくれて…!」


入学手続きなど諸々の事情で、生徒のことはある程度調べている。

水鶏ちゃん、補導歴あるんだよね。


「先生」

「なんだ手術岾」

「雑務って何するんですか?人が多すぎると、心臓がバクバクしちゃうんです」


今までダンマリだった手術岾ロクロくん。

彼はなかなか心配性というか、不安になりすぎというか、ネガティブというか。

それでも羅刹学園に来た以上、心の底に強さはあるんだろうな。


「今説明する。そもそも鬼機関は全国市区町村にそれぞれ何隊か配属されている。そこでは主に2つの任務がある」


無陀野先生が指を1本立てる。


「ひとつは戦闘部隊。桃太郎が攻めてきた時、前線で戦う」


無陀野先生が元々配属されていたところだよね。

このクラスも、こっち志望が多い。

桃に大切な人を奪われたりしている人は少なくないから、戦闘に不向きな能力を持っていないなら戦いたいって思う人が大半だから。

中にはにゃん(波久礼)みたいに戦闘に不向きでも身体能力で戦闘部隊に所属する人もいるし。

私も能力の伸ばし方次第では、入ってた可能性が十分にある。


もう1つ指を立てて無陀野先生は続ける。


「もうひとつは援護部隊。人間達に紛れて生活する鬼たちを支援する。

身寄りのない鬼を保護したり、生活の相談にも乗る。鬼は普通の医者にはかかれないからその体や心の診察も行う。

桃太郎との戦闘時には、救護なども担当する。

今回行くのは、援護部隊の方だ」


京都の援護部隊。

私が神奈川の方の医療部隊で副隊長になる前にいたところ。

もしかしたら顔を知った人がまだいるかもしれない。

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