1名逃げ出すというこちら側としても想定外なことはあれど。
神門くんが四季くんに近づいたことで、意識はそちら側に移る。
「ケリをつけよう」
前に会った時の好青年っぷりが嘘のよう。
声に温度はないし、目が据わっている。
「ケリってなんだよ!俺はなァ!」
「喋んなよ」
「…!」
「言ったろ。君の話は聞きたくないって」
神門くんは背後を指差す。
「ついてきなよ。2人になりたい」
そう言って四季くんの答えも待たずに歩き出す。
四季くんもそれについていく。
そんな四季くんを見て、無陀野先生は淀川先輩に目配せ。
淀川先輩は能力を使って透明になった。
2人を追ったのかな。
ドンッ!!!
「無陀野ォ!!!!」
色黒さんが地面を踏み締める。
「前の続きをやろうぜェ!」
「ねえ、次僕でしょ?」
「バーカ、第二ラウンドだよ。続いてんだ」
確かに戦闘狂だ。
普通の桃なら、名前が知れている無陀野先生と戦いたいなんて思わない。
誰かを助けようとかそういう気持ちがあっても、自分の命は惜しいものだから。
「幸せな奴だな。俺に手も足も出なかったことすら忘れられるなんて。それとも、ただの馬鹿か?」
「確かに第一ラウンドはお前の勝ちだ。けど、第二ラウンドは俺はぜってぇ負けねぇ!理由はお前が強いからだ」
色黒さんの手に細菌が集まる。
能力を使う気だ。
私は生徒を庇うように一歩前に出る。
「無陀野ォ。お前が強ければ強いほど、自分の強さに苦しめられる!雨過転生!」
「これって」
「…!」
無陀野先生の能力?
技名からしてまんまだよね。
兵士を作り出すのも、空中で弓を引いて構えているのも。
「初めて見た時からやってみたかったんだよ!」
色黒さんが手を下ろすと、それに合わせて大量の矢が降り注ぐ。
その矢の威力で、爆風が起き、整備されていない地面からは砂埃が舞う。
「怪我は?」
「だ、大丈夫です」
けど負傷者はいない。
無陀野先生が血を使って盾を作ったから。
「無陀野ォ!さあ、やろうぜ!言っちまえば、てめぇバーサスてめぇだ」
はぁ、と無陀野先生が息をつく。
「お前たち」
「?」
「アイツはお前らに任せる」
「え?」
「あれくらいお前らでどうにかしろ。十河もいるから多少の無茶は許容範囲だ」
「は?てめぇ、どういうことだ!」
「猿真似に興味はない」
「っ、くぅ…」
無陀野先生にバッサリと切り捨てられて、色黒さんは悔しそう。
「嬉しいねぇ。ご指名かい?」
「は?」
月詠さんは無陀野先生の視線を汲み取ったらしい。
月詠さんの方が厄介ってことか。
まあ当然だよね。
隊長格なわけだし。
「ハァァ!?なんだよそれ。戦いもしねえのかよ!?」











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!