第39話

終末まで
611
2024/07/02 15:00
「私はさ、ちゃんとした人じゃないの。




 なんて言ったらいいかな…




 ショウとロウみたいな人外…




 天使と神のハーフ。」





泣いている理由を知りたいなんて言われたら




話すしかないじゃんか




私のぜんぶを




もう、いいよ




私はもうすぐ終わるし




諦めたように話した




ロウは静かに聞いてくれている




「天使ってさ、




 生まれつき治癒能力があるんだけどね?




 …私にはそれがなかった」




一番苦しくて絶望したとき




お母さんとお父さんが私の検査結果を知って




涙を流していたとき




【なんでこの子は…】って




【どうしてよっ…】って




聞き飽きるくらいに聞いた




「その代わり、何億人に1人とかの




 特殊能力があった。」




戦闘向きの怖いくらい強いあの魔法




「普通ならいいなって思うかもしれないけど…




 人とと違うってだけで虐められる世界だから」




この世は天も地も残酷だ




弱いもの、異質なものはいじめの対象になる




…私の能力なんて前例がなかったから尚更




ないものとして扱われた




「…いじめ、られたのか…?」




「そう。ずっと虐められてきた。




 神の子の癖に何もできないって」




どうしてこうなっちゃったんだろ




「ロウ…?」




「っ…ごめん、ごめんなっ…」




私の目も前でボロボロと泣き崩れるロウ




「いや別に私のせいだしっ…」




「おかしいじゃん、そんなのっ…




 なんでいじめられなきゃなんねぇんだよっ…」




「ありがとう。私のために泣いてくれて…」




もう会った人も何があったかも




きっと全部察してしまったんだろう




「ロウと会ったのは能力がわかるちょっと前。




 ドクターのとこに預けてもらってたとき。」




結果がわかるまでどっか行ってこいというのが




地域の習慣で、私の最後のお出掛けだった




そこでロウと暮らしていたのはいいんだけど




ドクターが倒れちゃって




私治癒使えるんだから!と張り切ったのに




全然効かなくて。




結局通りすがりの人に助けてもらって




もうそこで絶望して




ドクターに書き置きをして




ロウの記憶を消し、そこを出た




「なんで記憶なんか…」




「…ロウの記憶に無能なんか要らないよ。」




「いやあなたは無能なんかじゃ…」




「ううん。無能だから、ね?




 今日で全部、終わりにしよう」




こんな私の終末まで付き合ってくれてありがとう




私の愛する人よ。




「はっ…?!ちょあなたっ!!!」




崖ギリッギリのところまで行って振り返って笑う




「ねぇロウ?




 …もう一度、出会ってくれてありがとう。




 ちゃんと、大好きだよ。」




「俺もだっつぅの…」




ロウが涙を拭ったその瞬間




「ばいばい!」




私は真っ逆さまに落っこちた。




下を見ればKOZAKA-Cの大群




…やだなこいつらに食べられて死ぬの。




抜刀、なんて都合のいい声が




私の耳を駆け抜けた気がした




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