昔話をしようか。
俺はそう呟いた。
この学校の桜にまつわる噂は知ってるよね。
実はその噂、事実なんだ。
ざわざわと桜の葉が騒ぎ始める。
遠い昔、忌み子が小さな村に産まれた。
額から突起が生えており、鬼の子だとも言われた。
その村には言い伝えがあった。
村の真ん中にある桜の木の下に死体を埋めると、魂が浄化され、安らかに天に昇れる。
もちろんそんな綺麗なものではなかったけど、ずっとそれを信じ、親族の為に桜の下に埋めてきた。
村の人達は忌み子を恐れて、桜の下に生き埋めにした。
忌み子は悶え、苦しみながら、そして恨みながら死んでいった。
村は呪われたように雨しか降らなくなった。
いつまでも続く雨は村の畑の作物を根絶やしにし、洪水によって到底人の住める場所ではなくなってしまった。
村の人達は忌み子の呪いだとまたも恐れ、生贄を差し出した。
その者の名は桜雨桜時といった。
生贄を出してから5年は何事もなく過ごせていた。
6年目の春。
まだ寒さも残る頃。
桜が咲き始めた。
ある親子は綺麗だと笑い、ある老夫婦は今年も見れたと喜んだ。
桜が満開になった頃、雨が降り始めた。
早めの梅雨かと思えば、何日経っても止む気配はない。
また呪いが再来したと村人は騒ぎ立てた。
生贄を差し出しても雨は止まなかった。
どうして。
足りないのか。
法則性は。
法則性はあった。
村人がそれに気づくのには沢山の時間と、生贄を費やした。
生贄にされた者達の怨念は溜まっていき、しとしとと降っていた雨は豪雨となって村を襲った。
やっとの事で雨を止ませた生贄には名前に「桜」に関する字が入っていた。
「桜」
忌み子は最も怨んだ物。
言い伝えさえなければ、私は死にはしなかった。
桜さえなければ、私は生き埋めになどされなかった。
桜があるから私は死ぬ。
桜のせいで私が死ぬ。
桜を名に刻んだ者は桜に縛られる。
櫻葉心と名乗った彼女は今にも消えそうな笑顔で話しかけてきた。
次の春には、本当に消えてしまった。
代わりに勝手に俺に思いを託して。
思いなんて綺麗なもんじゃないか。
生贄を俺にして、彼女は天に昇っていった。
生贄を託された俺は桜の下から動けなくなった。
俺の死体が、桜の木の下に埋まっているから。
俺は笑ってそう言った。
後ろにある桜が慰めるように静かに葉を鳴らした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
作者より🌸
長期間お休みしてしまい本当にすみません!!
この度、続きを投稿させていただきました!
コメントありがとうございます。
励みになりました。
お気に入り登録もして頂いておりまして…。
幸せです。
待ってくれていた方、本当にありがとうございます。涙がこぼれてしまいそうです。
今年から受験生になりました。
勉強に追われる日々となっていきますが、できる限り更新できるよう、精進して参ります。
最終回が近そうです。
また次回、お会いしましょう。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!