芽結のそんな呟きが聞こえる。
誰よりも優秀でいるために生まれつきの才能だけじゃ物足りず、努力も重ねてきた人だ。
その様子を俺は、俺達はずっとそばで見てきた。
だからこそここでの挫折は夢結にとって辛いものだと思う。
何も言うことができずにいると自由時間、夢結にとっては地獄の訓練の時間の終わりを告げる救いのチャイムが鳴り響いた。
施設の外にいるのがバレるとここの職員(俺達は先生と呼ぶルールだが)に怒られてしまう。
異能も発動していない俺なんかは特に。
苦しさを、悲しみを隠すような自傷気味の笑顔。
ずっと同じ場所で暮らしているのにそれでバレないと思われているのだろうか。
いや、芽結は慎重で自分の本音は絶対に外に漏らさない。
これはきっと無意識なのだろう。
だとしたら俺が言ってやれることは何もない。
これ以上負担をかけさせるわけにもいかない。
俺の力じゃ芽結を救うことなんて夢のまた夢なのだから。
そう、俺の力じゃ芽結を救うことは不可能だ。
それでも芽結には人望がある。
彼女自身が積み上げてきた実績によって得た心強い仲間がいる。
誰よりも口論で強い紅音と流音が協力してくれるなら百人力、先生達にだって負けることはない。
生憎、芽結が今現在この施設に残ることができているのは一応確認されている「異能の存在」のおかげ。
そして今までの彼女の実績からまだ利用価値があると思われているのが大きいだろう。
同年代の中でも劣るようになってきてからではいつ見捨てられてもおかしくはない。
芽結の次に誕生日が来るのは紗里奈。
しかし2週間も差ができてしまう。
そこで強い異能が出るという確証もなければ、それまでに芽結がここに残っていられるという確証もない。
今協力を仰いでいる2人や俺なんかは誕生日がもっと遅いから尚更だ。
だったら異能で脅すよりも2人にパッションでゴリ押してもらう方がいいと踏んだわけだ。
流音の軽口でようやく緊張がほぐれてきた気がする。
そうやって議論の対策を練る2人は最高に頼もしい。
最高の仲間達を持ったな、なんて2人の後ろ姿を見ながらあらためて実感した。




















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。