森は静かだった
木漏れ日がゆっくり地面を移動して
風が葉を揺らすたび
かすかな音が生まれる
あなたの名前は特に目的もなく歩いていた
ただ懐かしく思いながら
奥へ奥へと進んでいた
そう呟いた瞬間
低くて 少し掠れた声
心臓が跳ねた。
ゆっくり振り向く
そこにいたのは 赤い帽子を被った男
猫のようにつり上がった目で
こちらを見つめる
そして _______ 見覚えのありすぎる顔
...
そう言うヨクサルの目は
昔と同じだった
冒険をしている時の目
どこか楽しそうな目
二人は並んで歩き出す
昔みたいに
その名前を口にした瞬間
ヨクサルの足が止まった
ヨクサルは顎に手を当て
少し考えるような顔をした
ヨクサルは小さく息を吐いた
一瞬 理解が追いつかなかった
あなたの名前は立ち止まり
ヨクサルをまじまじと見る
そう言われて あなたの名前は思い出す
冷静かつ沈黙 自由気ままな行動
そして大事なことほど
言葉にしないところ
二人はそのまま
木の根に腰を下ろした
あなたの名前がそう聞くと
ヨクサルは少し間を置いてから
肩をすくめた
ミムラ
ヨクサルと付き合っていて
スナフキンを産んだ時の母親
事情を知らないわけじゃない
でも ヨクサル自身が
そう思い込んでいることに
あなたの名前は言葉を失った
...
ヨクサルは俯いたまま
ぽつりと言った
その時あなたの名前はふっと
思わず笑ってしまった
ヨクサルは一瞬きょとんとしたあと
鼻で笑った
でもその声は柔らかかった
ヨクサルは立ち上がり背を向ける
それだけ言って
森の奥へ消えていった
あなたの名前は胸の奥にしまったまま
誰にも言わなかったことを思い出す
本当はあの頃 自分もずっと
同じ旅人に片思いをしていたことを












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。