第3話

昔の話【ヨクサル】
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2026/01/13 05:32 更新



                森は静かだった
木漏れ日がゆっくり地面を移動して
風が葉を揺らすたび
かすかな音が生まれる

あなたの名前は特に目的もなく歩いていた
ただ懐かしく思いながら
奥へ奥へと進んでいた




あなた
   ...  この辺 変わってないなぁ 〜   





そう呟いた瞬間




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   おい   





低くて 少し掠れた声

心臓が跳ねた。
ゆっくり振り向く

そこにいたのは 赤い帽子を被った男
猫のようにつり上がった目で
こちらを見つめる
そして _______ 見覚えのありすぎる顔





あなた
   ヨクサル ?   

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   おう   久しぶりだな   




...




あなた
   え ! めっちゃ久しぶり !   

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   はは 森を散歩してたら   
偶然ってわけか



                 そう言うヨクサルの目は
昔と同じだった
冒険をしている時の目
どこか楽しそうな目


二人は並んで歩き出す
昔みたいに





︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   最近どうなんだ ?   


あなた
   最近 ? 楽しいよ 〜 !!   


あなた
   色々あるし 、 谷も賑やかだし !   

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   へえ  ...  



あなた
   特にスナフキンが _______   



                その名前を口にした瞬間



︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ...  スナフキン ?   




ヨクサルの足が止まった


あなた
   どした ?   


︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   今スナフキンって言ったか ?   


あなた
   うん   




                 ヨクサルは顎に手を当て
少し考えるような顔をした


︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   あの帽子の ?   


あなた
   そう !   
あなた
   緑の帽子で釣りばっかりしてて   
... 口悪くて




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ...  口悪いのは昔からだな   



あなた
   ...  あれ、 知ってるの ?   




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   知ってるもなにも   




ヨクサルは小さく息を吐いた






︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   俺の息子だ   




あなた
   え ???   



一瞬 理解が追いつかなかった





あなた
   え !?!?!?   

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   声がでかい   




                あなたの名前は立ち止まり
ヨクサルをまじまじと見る



あなた
   ちょ 、 待って待って!?   
あなた
   スナフキンってあのスナフキン!?   



︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   他にいねえだろ   




あなた
   だって、 全然似てないじゃん !   




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   性格は俺にそっくりだろ   




                そう言われて  あなたの名前は思い出す
冷静かつ沈黙 自由気ままな行動
そして大事なことほど
言葉にしないところ






あなた
   ... あ   



︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   だろ   


あなた
   子供の方がしっかり者だね   




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ... は ?   





                二人はそのまま
木の根に腰を下ろした




あなた
   ...  あれ、 ミムラとはどうしてるの ?   




あなたの名前がそう聞くと
ヨクサルは少し間を置いてから
肩をすくめた




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   別居してる   
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   長いこと話もしてねえ   



︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   だからさ   
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   俺はとっくに
別れたもんだと思ってる




ミムラ
ヨクサルと付き合っていて
スナフキンを産んだ時の母親



事情を知らないわけじゃない
でも ヨクサル自身が
そう思い込んでいることに
あなたの名前は言葉を失った




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ... 言ってなかったっけ   


あなた
   ううん   




...






︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ...  あなたの名前   


あなた
   なに ?   




                 ヨクサルは俯いたまま
ぽつりと言った




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   俺さ   
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ずっと昔から お前のこと好きだった   





あなた
   ... は ?   




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   勘違いはしないでくれよ ?   
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   今更どうこうするつもりはない   




                その時あなたの名前はふっと
思わず笑ってしまった




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ... 何笑ってんだ   


あなた
   ごめん 、 なんか、   



ヨクサルは一瞬きょとんとしたあと
鼻で笑った



︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   ふっへっ   
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   あなたの名前   
お前ミムラに似てきたな



あなた
   そう ?   




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   笑い方とか   

あなた
   ...  褒めてる ?   


︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   さあな   






                でもその声は柔らかかった

ヨクサルは立ち上がり背を向ける




︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ヨクサル
   あいつスナフキンを頼んだ 〜   




それだけ言って
森の奥へ消えていった



あなた
   ...  、    







あなたの名前は胸の奥にしまったまま
誰にも言わなかったことを思い出す

本当はあの頃 自分もずっと
同じ旅人に片思いをしていたことを








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