第5話

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2021/09/24 10:30 更新










 3年振りに向かったのは廃校になった小学校 。

 まだ幼かった俺たちが過ごした思い出の場所だ 。






 かけっこでよく勝負していたグラウンド 、

 人気過ぎて休み時間の度に行列ができてたあの遊具 、

 怪我しやすい俺がお世話になってた保健室 、

 皆で授業を受けた教室 。






 懐かしさを覚えながらも 、最後にたどり着いたのは屋上 。

 親と喧嘩した時や 、嫌なことがあった時は 、

 アイツとここに来ていた 。

 いわゆる秘密基地ってやつ ?

 出入り禁止なのにも関わらず出入りしていた俺たちって

 かなりやばいな 。なんて思ったりもする 。








 「 懐かしいね ~ 。 」

 『 ああ 、そうだな 。 』

 「 ていうか 、小学生の時から屋上使ってたとか

 私たちって結構問題児 ? 笑 」








 久しぶりにアイツの笑顔を見た気がする 。

 別に今まで1度も笑っていなかったわけじゃない 、

 多分あれは作り笑顔だったんだと思う 。

 自然に笑うアイツはやっぱり可愛いかった 。

 そう思うと同時に目頭が熱くなった 。







 「 え ! ちょっと湧 ! 何泣いてるの ?! 笑 」

 『 う 、うるせぇ ! 』







 なんてからかってくるアイツも泣いていた 。

 でも笑っていた 。2人とも 。







 そのままどちらからともなく抱き合い 、

 声を押し殺しながら泣いた 。






 寂しかったから ? 悲しかったから ?

 違う 。何処か懐かしくて 、何故か暖かかったから 。

 この時ばかりは 、何も知らず幸せだったあの頃に

 少し戻れた気がした 。






 そして俺たちの影が重なった 。

 ……… 正確には俺が " 押し付けた " が正解か 。






 当然アイツは驚いてた 。でもその後すぐ 、







 「 ごめんね 。 」







 そう言ったアイツの涙を拭った 。

 自然と悲しくはなかった 。むしろすっきりした 。






 その後俺たちは長い時間抱きしめ合った 。

 理由は分からない 。

 ただ離れたくなかったんだと思う 。お互いに 。







 『 怖い ? 』

 「 … ちょっとね 。 」

 『 そっか … 。 』







 別にこの選択が正しいなんて思ってない 。

 でも俺たちにはこれしかなかった 。

 だって幼馴染だからさ 、

 どっちかが困ってたら助けたくなるでしょ ?






 俺は 、「 アイツを好きになってしまった罪 」を 。

 アイツは 「 あの人を忘れられなかった罪 」を 。

 償えそうにないから 。

 なら 、いっそ二人でこの世界に溶けて、

 消えてしまえばいい 。






 頼って欲しいと願った結果がこんなに残酷でも 、

 アイツが喜んでくれるなら別に悪くない 。

 これが惚れた弱みってやつか 。






 なぁ 、あなた 。

 あなたと過ごした時間 、恋した時間 、

 それに苦しんだ時間 、辛かった時間 、1人で過ごした時間 、

 全て俺の大切な思い出だよ 。

 小さい頃から一緒に居たから、

 俺の思い出の記憶には必ずお前が居た 。

 そしてこれからもずっと俺の隣に居てくれると思ってた 。

 この先どうなるかなんてわかんないのにね 。

 お前を好きになった時 、正直びっくりした 。

 でも今までを振り返ると思い当たる節が何個かあったんだ 笑

 何回もあなたに気持ちを伝えようとしたけど 、

 「 もしこれで今まで積み上げてきた関係が崩れたら ? 」

 「 あなたの隣にいられなくなったら? 」

 って考えたら 、

 弱い俺は 、この気持ちを隠し続けて

 あなたの隣に居続ける事を選んだ 。

 いや 、これしか出来なかった 。

 その結果がこれだもん 、笑っちゃうよね 。

 だから 、あなたがあの人の元へ行った時

 どうすればいいか分からなかったし 、

 あなたが隣に居ない時間はめっちゃ辛かった 。

 でも何より困った時に頼ってくれなかったことが1番辛かった 。

 俺の前で全然弱いとこ見せてくれないんだから 笑

 あなたは俺にとって大切な幼馴染だから 、

 少しくらい頼って欲しかったなって 。

 でもこうやって最後に頼ってくれて嬉しかったよ 。

 さっきは困らせてごめんね 。

 こうでもしないと 、

 俺ずっとここから動けないような気がしたから 笑

 今でもあなたのこと好きだし 、世界一愛してる 。

 俺の気持ちが届かないのは分かってるけど 、

 これだけは知ってて欲しい 。






 " 次はお互い幸せになろうな 。 "







 『 じゃあ … 行くよ 。 』

 「 …… うん 。 」






 お互いの体温を感じるられるように 、忘れないように 、

 強く抱き締め 、俺たちはこの世界に溶けていった 。






 夕日が綺麗だった 。

 それに照らされるアイツも綺麗だった 。







 『 ……… 愛してるよ 、あなた 。 』







 勿論アイツが何か言うことは無かった 。

 これでいいんだ 。






 スローモーションの様にゆっくりと 、

 世界に溶けていく俺たちを肌で感じながら考える 。






 ほんとにこれで良かったんだろうか 。

 でもこれ以上この世界に居る事はお互い耐えられなかった 。

 どうしようもなかったんだ 。






 全身が酷く痛いよ 。

 もうどこが痛いのかも分からないや 。

 ああ 、もう日が暮れちゃったみたい 。少し肌寒いね 。

 薄れる意識の中 、俺の腕の中で眠るまだかろうじて暖かい

 アイツの体温を感じながら俺も眠りに着いた 。

 次 、目覚めた時は幸せになれると信じて 。






 でも 、アイツの薬指に光るリングを外す気力は

 " 俺には無かったみたいだ 。"



















 「 ねぇ 、湧 。


  ________________________ 私 、空飛びたい 。 」














 𝖾𝗇𝖽 .

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