《日本視点》
その時、スマホの画面が暗転して、赤い文字が映された
思っていたより、広い。薄暗いけれど、天井は高く、廊下はまっすぐ奥まで続き、左右にずらりと並ぶ扉。
ちらほらと、カンヒュが居た。
ひとり、ふたり――
いや、もっと。
廊下の途中や、開けた共有スペースに、何人ものカンヒュたちが集まっていた。
反射的に足が止まる。
全員、知らない顔。名前も、国も、何も分からない
……子供の遊び。
走って、逃げて、捕まって。また走って、探して、捕まえる
ただの、子供の遊び
でも……
♠の、3
扉…開かない…?
さっきまでは開いてたのに…
廊下の先から、誰か歩いてくる
赤と黒の――鬼の仮面。
角があって、表情のない目の穴が、こちらを向いている。
多分、この「おにごっこ」の――鬼。
……でも。
握られているもの。
――銃。
黒くて、無駄のない形。
光をほとんど反射しない、冷たい質感。
いとこが、
よくモデルガンの模型を持っていた。
重さを自慢して、撃つ真似をして、
「本物みたいでしょ」って笑っていた。
……でも
あの模型、こんな雰囲気じゃなかった。
引き金の位置。
構え方。
指の置き方。
――ちゃんと、使う前提の持ち方。
まるで…
――バンッッッッ
乾いた音が、アパートの中に異様なほど大きく響いた。
一瞬、何の音か分からなかった。
でも、耳の奥がじん、と痺れて、心臓が強く跳ねる。
……銃声。
理解した瞬間、誰かが悲鳴を上げた。
怒鳴り声、足音、息が荒くなる音。
廊下が、一気に混乱に包まれる。
他の人が押しかけるせいで
アメリカさんから離れてしまった
背後から、もう一発――
――バァンッッッッッ
さっきよりも、音が大きい
音だけで、背中が凍る。
撃たれたのが床なのか、壁なのか…人なのか、分からない。
分からないから、怖い。
逃げなきゃ、多分死ぬ
銃を持ってる鬼に捕まって、はい終わりじゃない
絶対…撃たれる
後ろから、靴音。一定のリズムで。
……追ってきている。
咄嗟に曲がって開いてる部屋の中に入る
扉を閉めて鍵をして、開けられないようにしておく
息を殺して、外の音を聞く
足音が、段々遠ざかって聞こえなくなった
…アメリカさんは、無事だろうか
…いや、無事な筈。あの人運動神経いいし
でも…
やっぱり、怖かった












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!