そこには、一体どれだけここにいたのだろうか、
虚ろな目をした少年の姿があった。
しゃがんで、目線を合わせて話してみる。
少年は狐につままれたかのような顔をして
口をぱくぱくさせる。
無理もないよな。
ホストにこんな慈善活動してるなんてイメージ、
ないだろうし。
ぼくが手を差し伸べるとおそるおそるだが
手を取ってくれて、
少し安心する。
まずはこの子に、
美味しいご飯を食べさせてあげなければ。
少年は、ホストクラブの非現実的なハレの空間に
目をきらきらさせている。
当時のぼくみたいに何も感じられない体に
なってなくてよかったな、と思いながら
とりあえずスタッフルームに向かう。
スタッフルームに入ってそう声をかけても、
オーナーの反応はない。
その代わり、黒服3人が事務作業をしていた。
そう言って黒服の一人が
ぼくの後ろにいる少年をまじまじと見つめている。
少年は少し怯えている様子だった。
少年はちょっと怯みながらも、
少しずつ口を開き始めた。
その様子を見てほっとしながら、
酒やら食品やらが収納されている
キッチンスペースに向かう。
そういえば、ぼくが初めてこのお店に来たとき
オーナーが出してくれたカレーは
買いだめしているレトルトカレーだった。
あのカレーはなんですかって聞いたら、
オーナーに笑われちゃったけどね。
恥ずかしい恥ずかしい。
お、話してる話してる。
よかった、あの3人がいて。
この店に来る人はキャストも客も
もれなくみんなどこかしらに欠陥があるから、
黒服もそれなりのコミュニケーション能力が
ないとやってけないんだよなぁ。
……なーんてことを、この前関西人の黒服と
お茶をしばきに行った時に言ってたっけな。
一瞬ちょっと申し訳なさそうな顔をして、
でもやはりお腹が空いていたのだろう
1口、また1口とカレーを口に運ぶ。
そんな少年の目には、涙が溜まっていた。
少年は言いづらそうに口をもごもごする。
……そりゃそうだよな、
大抵の人はルスクみたいに飽きて家出したり
しないもんな。
……なんとなく察してしまった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!