第3話

プロローグ
19
2025/01/22 02:39 更新
小学六年生の夏
クラスに私立景星学園放送部の部長が朗読にやってきた
その人が読んでくれたのは
私が好きな氷の上のプリンセス一巻の盛り上がり部分
薄明夜半
薄明夜半
リンクをぐるぐる回っているうちに、前の人の得点が表示された。演技はあまりちゃんと見ていなかったけれど、けっこういい点が出ている。
いい演技のあとに、失敗したらはずかしいなぁ。なんて、また弱気なことを思いかけたけど。
衣装の襟もとで揺れてる二つのチャームをそっとにぎりしめて、心の中でつぶやく。
——だいじょうぶ、きっとできる、自分を信じて!——
このお守りがあれば、このおまじないを唱えれば‥‥‥きっとわたしはだいじょうぶ!
そんな最初の数行から始まった
もちろんプロに比べれば拙いけれどすごく上手で
中学の部活が決まらない小学生を朗読の道に引きずり込むには十分な朗読だった
その声で創られた世界を浮かべていた
薄明夜半
薄明夜半
うそっ、きのう来なくてもいいって伝言してもらったのに、来てくれたなんて!
観客席のみなさんへのおじぎの合間に、祐子さんに向けて何度も個人的に手を振った。
気が付くと
その人の朗読は終わっていて
私の中ではいまだにかすみがリンクをすべっていた

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