(叶夢視点)
入学から数日が経ち、クラスの子達も雰囲気に馴染んで来た頃。
私は、放課後の蒼空とのダンス練習に明け暮れた。
クラスのレベルは思っている以上に低い。
ダンスも歌も初心者の子が多く、このクラスで安心していたら私の実力も地に落ちる。人の事言えるほど上手くはないけれど..。
放課後の練習は思っていたより厳しかった。私のできていないところを何度も指摘される。
そう思い、力を思い切り入れてターンする。が、バランスが崩れグラッと体が傾く。
ドーンと鈍い音を立てて転げた。打ちどころが良く、幸いにも無傷だった。蒼空が駆け寄ってき、体を優しく起こしてくれる。
怒っているようで、なんかやんか心配してくれる蒼空に自然と心が暖かくなる。
昔のダンス教室ではコケようが怪我をしようが、心配されることは無かった。よく怪我をして帰り、母を驚かせていた。
こんな感じで蒼空は自分が出来ていない所を明白にしてくれる。
指摘の後に必ずアドバイスをくれる。
蒼空の手拍子に合わせてリズムに乗る。
もっと体全身を動かして。指先まで綺麗に。ステップは軽く。動きを大きく。
一通り踊って、蒼空の評価を待つ。
蒼空の顔がぱあっと明るくなる。
放課後の練習を初めて1週間程経つ。今まで1回も蒼空に褒められていなかった。
ついつい嬉しくて蒼空に抱きつく。蒼空は躊躇うも、優しく抱きしめ返してくれた。
お互い交代ごうたいで練習をする。
蒼空のダンスはすごくしなやかで綺麗。見とれてしまうほどだ。
こんな自信満々な蒼空が私の憧れだ。私だって蒼空の憧れでいられるように頑張らないと。
____そんな放課後の特訓を続けている中、私たちはこっそり練習を覗く影に気づかなかった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!