ライブまで、1ヶ月を切った。
あれから1週間、僕はいまだにくにくんと、しっかりとした話ができていない。
ちゃんと、向き合おう。そう思っても、
一度僕の言動と、僕のした何気ない行動で傷つけているんだ。
あの時の、苦しそうで、一瞬顔には出さないけど心の何処かで僕を強く嫌悪していた、そんな表情。
思い出すと、話そうと思っても急に声が出なくなって、声が詰まる。
れるちに、小声で話しかけられたものの僕は飛び上がるように返事をした。
そういえば、今公式配信中だ、企画は終わったけどまだ挨拶はしていなかった。
ずーっと考え事をしていたせいで全く話の内容も覚えてない。
僕はおどおどしながらもそう言った。
…全く配信に集中できなかった、
そうだ、明日はリハーサル。
ダンスも歌も実際に会場で通してみようという話になったんだ、
そう言い僕らはディスコから抜けた。
少し安堵して、僕はスマホを手に取った。
「今日もすたぽらの配信カオスで面白すぎた〜!」
「今日も平和で何より!楽しかったです!」
ぽらりすのツイートが、TLにぶわっと流れてくる。
こうやってぽらりすさんのツイートを見ていると少し落ち着く。
「今日のこえくん、やっぱり元気なかったような…心配」
「こえくんあんまり喋ってなかったよな〜体調悪かったりしたのかな…」
隠せて、ない。
ぽらりすにも気づかれて心配されて、
…僕のせいで、あれから全員でいる時も居にくい雰囲気が出ているし、
なんとか、れるちやゆうくん、こったんが気を遣って保っているけど、
みんなに恩を返すどっころか、迷惑ばかり、かけてるよね。
そもそも、こうなったのも、全部僕が始まりだ、
僕がくにくんに良かれと思ってしたことが悪い方向に行って、
ドミノ倒しみたいにみんなに迷惑かけて言って、メンバーだけじゃなくてぽらりすにまで心配かけて、
つい思ったことをぼそっと口に出してしまった。
思ったことを、考えなしに割と言ってしまうところがあるのかもしれない、
れるちはニコニコしながら僕を見た。
まさかの言葉に拍子抜けした。
れるちの言葉は、すごい。
心配で、悩んで、怖くて。
そんな時、れるちの言葉でたくさん元気をもらえる。
言葉の力って、改めてすごいな。
れるちがそう言いゲーミングチェアから立ち上がった。
お互い、倒れて、また支えて、支え合って。
欠点が誰にしもあるなら、僕にできることを最大限、もう一度考え直してみよう。
そう思えた。
「れるくんへ
さきに会場に行って練習しに行くね
だから朝いなくてもびっくりしないで。
朝ごはんは戸棚の中のパンとバナナを食べたから大丈夫。」
そう書いた置き手紙をれるくんのデスクに置いた。
ガチャ
もう気づけば7月だ。
だんだんと太陽が照り付け暑くなってくる。
ど田舎住みだったけど急に都会に来ちゃったもんだから、
アスファルトの照り返しがすごくてだいぶ困ってたり。
電車で20分ぐらいすれば会場にはつく、
意外と近い場所なんだ。
なんで、早起きしてこんなことしようと思ったのか、
まぁライブが初めてだし会場を早く見て慣れておきたいってのもある。
実際は、
くにくんってわりと一番乗りに練習場に来たりする。
だから先に行って朝、会えないかなとかちょっと思って、
今日は決心がついたから。
ライブ会場にGoogleマップでルート検索しながら来たが、会場は意外と大きそうだ。
僕は会場内に入った。
クーラーが効いていてだいぶ涼しい。
そう言って会場に行こうとした、その時だ。
〜♪
音楽が流れていた。
しかも、First starだ。
誰もいないのに…⁉︎
ま、まさかこれって…し、心霊現象…⁉︎⁉︎
タイムリープが実現したわけだし、七不思議みたいな感じで存在するってこと、⁉︎
誰もいない会場のはずなのに、音楽が鳴り響いている_
僕は恐る恐る会場を覗いた。
そこには、くにくんがいた。
1人で、歌っていた。
くにくんが倒れ込み、僕は会場のステージに登ってくにくんに近寄った。
そう言いくにくんはばつが悪そうに苦笑いを僕に向けた。
僕もあの時は歌っててあまり気付けなかったけど、
歌っているくにくんは、必死で、辛そうで。
ふとくにくんのズボンを見た。
膝部分が若干擦り切れていて、何回も倒れては立ち上がってを繰り返したんだと分かった。
1人で、倒れて、立ち上がって。
1人で、戦ってたんだ…、
違う。違う。違う。
なんで、なんでくにくんが謝るの?
誰も、誰も悪くないこと、そうでしょ、?
そう言いたいのに、くにくんの表情が胸に突き刺さって、声がまた出なくなる。
馬鹿野郎、僕の馬鹿…!
早く、逃げるな、逃げるな、声を、声をあげろ…!
そこにはゆうくんとこったんもいた。
バレバレだ、
いつだって、見抜かれてしまう。
僕も、言わなきゃ。
くにくんに、自分の言葉で_
くにくんは一度俯いた。
そうして、涙を少し目に溜めて、言った。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。