第4話

旅の中断
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2025/04/20 15:06 更新
舗装の甘い山道を、古ぼけた緑のオールドカーがガタガタと揺れながら進んでいく。

スンミンは助手席でシートベルトを何度も引っ張って調整しながら、ついにはぼやいた。
スンミン
……ねえ、ヒョン。これさ、ほんとにちゃんと着くよね?
リノ
それは俺に聞くことじゃない。機械に聞いてくれ
スンミン
じゃあヒョンが通訳してよ。車語、得意でしょ?
リノ
うるせえ。もうちょいしたら真っ直ぐな道に出るって地図に書いてあったから
スンミン
地図って……紙のやつだし。今時アプリくらい使おうよ
リノ
山奥に電波が届くならな
二人はくだらないやりとりを交わしながら、それでもどこか楽しげだった。

スンミンは後部座席から段ボール箱を引き寄せ、ポスターを数枚取り出した。
スンミン
ねえ、ちょっと撒いてみていい?
リノ
は?
スンミン
映画のワンシーンっぽくない?こう、走ってる車の窓からチラシ撒くの
リノ
いや、意味ないだろそれ
スンミン
でも、なんかワクワクするじゃん
そう言いながらも、リノの口元にはうっすら笑みが浮かんでいた。二人の小さな旅が、確かに始まっていることを実感する、そんな瞬間だった。



けれど、旅はいつも順調に進むわけではない。
リノ
……ん?
車体が突然、異音を立て始めた。リノは眉をひそめ、スピードを落とす。
スンミン
なんかおかしくない?後ろからガラガラ音してる……
──ゴッ!

何かが底を打ち、車がガクンと跳ねた。そして、

──キキィィィィッ!

急ブレーキの音と共に、車は停まってしまった。
スンミン
うわっ……! ちょ、今の……!
リノ
やばい、ルーフ!
二人はすぐさま車を飛び出した。

屋根の上に固定していた荷物のうち、ロープが緩んでキーボードのカバーとスンミンのギターのケース、さらに段ボール箱の一つが落下していた。ギターは運よく草の上に落ちていたが、段ボールは道の脇に転がって中身が散乱している。
スンミン
ポスター……っ、うわ、ぐしゃぐしゃだ
スンミンは慌てて駆け寄り、ポスターを拾い集める。泥のついた紙、折れ曲がったロゴ。インクがにじんで、文字が読めなくなっているものもあった。
スンミン
リノヒョン! キーボード大丈夫?
リノ
……見てくる
リノは慎重にカバーを開け、中身を確認した。目立った傷はないが、角が少し削れていた。
リノ
……多分、使える。多分な
二人はしばらく黙って、落ちた荷物と散らばった紙の束を見下ろしていた。

空気が重い。

風の音と、小鳥の鳴き声だけが辺りに響いていた。
スンミン
はあ……くそっ
スンミンがつぶやいた。
スンミン
何でこんなとこで止まんだよ……。マジでクソだな、この車
リノ
おい、それ俺の責任みたいに言うなよ
スンミン
いや、別にそう言ってないけどさ
リノ
言ってんじゃん、言い方が完全に
スンミン
もういいよ……
スンミンは手にしていた泥まみれのポスターをぐしゃりと握り潰し、ビリビリと破き始めた。
リノ
ちょっ、何やってんだよ!
スンミン
こんなもん、もう意味ないだろ!
リノ
意味あるだろ!? せっかく作ったのに
スンミン
それはヒョンの自己満だろ! 僕だって全部投げてきたのに……!
スンミンの叫びに、リノは言葉を詰まらせた。

怒りと苛立ちが胸の奥からこみ上げ、リノは思わず車のボンネットに拳を叩きつけた。ガンッと鈍い音がする。
リノ
っ……くそっ……!
スンミンは何も言わず、唇をかんだ。

苛立ちは行き場をなくし、二人の間に冷たい沈黙が流れる。

木々の間からのぞく薄曇りの空。鳥の声すら遠くに感じるほど、重苦しい時間。

スンミンは地面の石を蹴り飛ばし、リノは片手で額を押さえて俯いた。

しばらく、何も言わず、ただその場に立ち尽くす二人。

こんなはずじゃなかった。

楽しくて、ワクワクする旅になると思っていた。でも、現実は容赦なく感情を揺さぶってくる。

それでも、道は続いている。先が見えなくても、歩くしかない。どこかでまた、あの曲のように光が差し込む瞬間があると信じたくて、二人はこの旅を始めたのだから。

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