舗装の甘い山道を、古ぼけた緑のオールドカーがガタガタと揺れながら進んでいく。
スンミンは助手席でシートベルトを何度も引っ張って調整しながら、ついにはぼやいた。
二人はくだらないやりとりを交わしながら、それでもどこか楽しげだった。
スンミンは後部座席から段ボール箱を引き寄せ、ポスターを数枚取り出した。
そう言いながらも、リノの口元にはうっすら笑みが浮かんでいた。二人の小さな旅が、確かに始まっていることを実感する、そんな瞬間だった。
けれど、旅はいつも順調に進むわけではない。
車体が突然、異音を立て始めた。リノは眉をひそめ、スピードを落とす。
──ゴッ!
何かが底を打ち、車がガクンと跳ねた。そして、
──キキィィィィッ!
急ブレーキの音と共に、車は停まってしまった。
二人はすぐさま車を飛び出した。
屋根の上に固定していた荷物のうち、ロープが緩んでキーボードのカバーとスンミンのギターのケース、さらに段ボール箱の一つが落下していた。ギターは運よく草の上に落ちていたが、段ボールは道の脇に転がって中身が散乱している。
スンミンは慌てて駆け寄り、ポスターを拾い集める。泥のついた紙、折れ曲がったロゴ。インクがにじんで、文字が読めなくなっているものもあった。
リノは慎重にカバーを開け、中身を確認した。目立った傷はないが、角が少し削れていた。
二人はしばらく黙って、落ちた荷物と散らばった紙の束を見下ろしていた。
空気が重い。
風の音と、小鳥の鳴き声だけが辺りに響いていた。
スンミンがつぶやいた。
スンミンは手にしていた泥まみれのポスターをぐしゃりと握り潰し、ビリビリと破き始めた。
スンミンの叫びに、リノは言葉を詰まらせた。
怒りと苛立ちが胸の奥からこみ上げ、リノは思わず車のボンネットに拳を叩きつけた。ガンッと鈍い音がする。
スンミンは何も言わず、唇をかんだ。
苛立ちは行き場をなくし、二人の間に冷たい沈黙が流れる。
木々の間からのぞく薄曇りの空。鳥の声すら遠くに感じるほど、重苦しい時間。
スンミンは地面の石を蹴り飛ばし、リノは片手で額を押さえて俯いた。
しばらく、何も言わず、ただその場に立ち尽くす二人。
こんなはずじゃなかった。
楽しくて、ワクワクする旅になると思っていた。でも、現実は容赦なく感情を揺さぶってくる。
それでも、道は続いている。先が見えなくても、歩くしかない。どこかでまた、あの曲のように光が差し込む瞬間があると信じたくて、二人はこの旅を始めたのだから。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。