藤原side
これは去年の出来事。
大吾は元々、7人の中で1番jewelsに優しく接していた。
毎朝、俺たちが車から降りてくるところを待ち伏せしている子達にも、笑顔で手を振ってそれに応え、時には頭を撫でてあげたり、目を見て微笑んだり、いつでも、いわゆる神対応をしていた。
俺らが呆れるほどにjewelsに甘く、笑顔を振りまいた。
もちろん、プレゼントだって嬉しそうに受け取って、断るところなんて見たことがなかった。
夕方、帰る時に彼の執事が大量のプレゼントに溺れそうになるのも日常茶飯事やった。
せやけどその秋、事件は起きた。
大吾はいつものようにjewelsに笑顔で対応し、プレゼントも沢山貰っていた。
放課後、大吾はドヤ顔で俺たちにプレゼントの山を見せた。
その中に一際大きな包みがあって、その場で袋を開けると、中身は大きなクマのぬいぐるみだった。
大吾はそのぬいぐるみが本当に気に入ったようで、嬉しそうにほっぺたをスリスリしていた。
しかもその日はそれを抱き枕にして寝たんだとか。
とか何とか言ってたっけ。
それから1ヶ月程経ったある日。
大吾の元に一通の手紙が届いた。送り主は不明。
いつの間にか鞄の中に入れられてたんやって。
そこにはこう書かれてあった。
それを読んだ大吾は、顔面蒼白で俺らに助けを求めてきた。
ただ事ではないことはすぐにわかった。
手紙の内容は第三者の俺でも身の毛がよだつもので、大吾にとっては恐怖以外の何物でもなかったはず。
大吾の家では、執事達の手によってぬいぐるみが調べられ、目の部分にカメラ、中には盗聴器が仕込まれていたことが判明した。
万が一を考えて、大吾の部屋にあった大量のプレゼントも全て処分することになった。
学校では、大吾を探し回っているという女子生徒が捕まえられ、それでもずっと
とか言っていたらしい。
彼女はその日のうちに学園を追放された。
大橋の家で俺らは集まった。
雅は大吾の背中に手を添えようとして、でもやめた。
大吾はそれまで見せてきた笑顔からは想像出来ない程に、目に光もなくて暗い顔をしていた。
明らかにそれが大丈夫でないことは、そこにいた全員が感じていた。
俺らは、それ以上なんも言えんかった。
大吾の心の扉が閉まる音がした。
それから、大吾はすっかり変わってしまった。
今まで明るい奴やったのに、一匹狼のように冷酷になった。
jewelsからの声援にも一切反応しなくなって、俺ら含め、周りは戸惑いを隠せなかった。
プレゼントに関しては特に過激に反応して、自分だけでなく他のみんなにも受け取らせないようにした。
彼女は自分の手からそれが離れたことに一瞬喜んだ顔を見せた。
だけど……
グシャッ……
jewelsの目の前で、ぐしゃっとつぶされていくそれ。
jewelsも俺らも固まった。
ぐちゃぐちゃになったそれは、床にぽとっと落とされた。
泣き出してその場に座り込んでしまったその子。
大吾はjewels冷たい視線を向けると、そのまま立ち去った。
その後も大吾は、お構い無しに残酷なことをし続けた。
でも、俺らにもどうにも出来んかった。あんなことがあったら、こうなるのも仕方ないと思ったから。
大吾がそんなになっちまったもんだから、次第に贈り物も無くなっていった。
それに比例して、ああいうことがまた起こったらどうしようかという、俺らの不安と危機感も少しずつ薄れていった。
藤原side 終了