かつては人で賑わったであろう遊園地の残骸を黒く彼女は染め上げた。古びて錆びた円形の鉄塊を暗闇をたたえた影が呑む。
彼女はその上に乗り、心底笑顔だった。
雪も降っていないのに、今や過去となった享楽とした時間を見下した。
そう言った。
ポツリと、誰かに向けられた言葉を。
見慣れた天井、少し狭いベットに昨日の飲みかけた水。
あぁ、夢を見ていた。夢を覚えるタチではないが、最近ずっとそればかりで飽き飽きしていた。
疲れが取り切れていない身体を曲げて起き上がる。
この夢を見ると、身体が妙にダルい。
これも老いのせいだと、言い訳をする。
いつもの常套句で自分が嫌になる、その言い訳はどうにもしっくりこない。自分の中に嫌な部分を見出すのに億劫になっている。それすら嫌になる、だからあきらめた。
そんな考え事をしながら、最低限の支度を済ませる。
少し歩くか、と思い立ち一時設営の避難キャンプの方に足を進める。早朝にも関わらず多くの人が行き交っていた、多種多様ではあるが皆一様に活気があった。
ここは【残火】が居るから、比較的安全であるのだ。
それが日常だった。
顔見知りの奴らに軽く挨拶を交わして、テントを潜り抜けていく。朝食の芳しい香りが何処からかやって来て、うちの食いしん坊天使に何か買ってってやるか、という思考が顔を出した。
そのようなことを考えている時に…
ふと、呼び掛けられた。
いかにも占い師をしているのような装いの老婆が、私を呼び止めた。
ますます怪しい。少し嗄れた声が引きつってまさしく詐欺といった体裁だ。
老婆は酷く咳き込む。
何かを伝える様に強い眼をしていた、
杖にもたれ掛かりながらよろめき立ち上がった老婆はテントの奥へと姿を消した。
呆れかそれともぞわりと燻った恐怖心からか、それをただ呆然と、見ることしか出来なかった。
老婆が消えてから一分程、テントの奥を意味もなく見つめて、口からポロリと言葉が転げ出た。
意味分からん…けど。無下にはできない説得力が感じられた。警戒するに越したことないけれども、嫌な予感が背筋を伝っていくような感覚が確かにあった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。