少年だった彼が、見慣れないキャンプの中で項垂れている。行き交う人々は彼を視界には入れるが、何も言わず立ち去っていく。それもそうだ、その様に項垂れる者など星の数程見ているからだ。逃げた先は、また地獄であるこの世界で、失う責苦を味わう人間は少なくはないのだから。
しかし、彼を星の中から掬う者がいた。
高い背丈にあまり手入れされていると思えない髪でダボダボの服を着ている男。
ポケットに手を突っ込み、一声を掛けたかと思えば彼の隣にドカッと座り込む。
彼は、家族を失った。
そして一人遠く離れた避難キャンプに逃げおおせてきたのだ。
懐から取り出した、革のポーチから一本の煙草。
すぐさまそれを咥えて、もう片手に持っていたライターで火を付けた。
白い煙が辺りを染める。
不思議とその香りは、心地よいものであった。
淡々とそう告げた。
まるで世間話をするかのように、何処か遠くを見据えて
幼き日の彼は、絶句した。
それは、あまりに救いがないではないかと。
大きく息を吐き出す。
その呼気は、酷い怒りと諦めを孕んでいた。
彼は昔の自分に諭すように告げた。
灰皿に煙草をぐりぐりと押し潰した。何度も念入りに。
男は哀れんでくれていた、そして生きていてくれと切に願っていたのだ。
彼の心は濁っている。自分への嫌悪と悪魔への憤怒。
そのどちらもが家族への後悔から生まれていた。
もう会えない、言葉も交わせない。
心の中で、その思いが反芻していた。
それを口に出したら、怒りが「熱」になってしまうと男は分かっていたから続く強引に言葉を遮った。
何処かで呟く。
夢は、未だ続く。
その詩を、どこまでもいつまでも謳っている。
家族と交わすことのないからこそ、彼は決別と進歩を
少しずつ感じることが出来たのだから。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。