第17話

火竜の決断
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2023/12/17 10:33
グルー・フェステ
グルー・フェステ
…カルル。
火竜は静かに呼びかけた。グルーは少年と出会ってから、人生が変わったことを感じていた。カルルに出会えたことが火竜にとって、人生で最高の出来事だった。
カルル
カルル
...ありがとう、グルー......オレも、君に出会えて、本当によかった......。
カルルはグルーに微笑みかけ、その瞬間、グルーは彼が願ったことを知りたくなり、あの時の出来事をもちかけた。
グルー・フェステ
グルー・フェステ
『......カルル、そなたは何を願ったんだ?』
グルーは好奇心を抑えられずに尋ねた。カルルは、微笑みながら答えた。
カルル
カルル
......このまま......平和......幸せな......生活......グルーと......一緒...に......過ごしたい...。
カルルの言葉に、グルーは心が震えた。彼も同じ気持ちだった。グルーはカルルを羽で抱きしめた。
グルー・フェステ
グルー・フェステ
『そうか......どうか、このまま終わらぬ夢を見ていたい......お願いします...と願った。』
カルルは、グルーが言うことに耳を傾けながら、横を向いていた。火竜の目は、少年の姿に向けられていた。少年は、願い事をしたことをグルーに目を輝かせていた。

グルーは、自分自身を奮い立たせ、少年の願いを叶えるために力を振り絞った。すると、少年は喜びの声を上げ、グルーはその笑顔を見て、自分の中にあった暗い感情が消え去るのを感じた。

そんな中、カルルはグルーに寄り添い、グルーへの思いを誓った。そして、カルルは最期の力を振り絞って、グルーの頬を弱々しく撫で、涙を流して彼に告げた。
カルル
カルル
......さよ...ならじゃ...ないよ。
グルーは、カルルが泣きながら自分に言葉をかけるのを聞きながら、心の中で悲しみに打ちひしがれた。しかし、カルルは続けた。
カルル
カルル
また......会え...るよ......本で......死...でも......転生......する...て......書いて......た......だか...ら......さよなら...を......言わない...で...。
グルーは、その言葉に救われたような気がした。火竜は、またカルルと会える、再び彼と出会えるという希望が持てた。
グルー・フェステ
グルー・フェステ
『っ!......そうだな、また会える。』
カルルの言葉に返答し、グルーは固い決意を胸に抱いた。彼は、カルルとの出会いを決して忘れず、彼が自分の中に刻まれるようにした。
グルー・フェステ
グルー・フェステ
『…カルル……もうそろそろだ。』
グルーの言葉に、カルルは微笑みながら目を閉じた。そして、火竜の優しさに包まれながら、静かに息を引き取ろうとしていた。
カルル
カルル
...そっか......ぐるぅ......えがお...つくるの......下手...だ......いがいな......一面....見れ...て......よかっ…た......。
グルー・フェステ
グルー・フェステ
『っ...カルル、カルル!我は、そなたに出会えて良かった!知らなかった景色や人間のことを、教えてくれてくれありがとう。だから、また会おう!』
カルルは最後の力を振り絞り、グルーに言葉を残した。「……ぐるぅ……そん…な……キミ…が……スキ…だ……」その言葉を残して、カルルは静かに息を引き取った。

グルーは悲しみに暮れ、涙を流してカルルを見送った。しかし、城の中でも遠くから竜の遠吠えが聞こえてきた。リウス王とルーがカルルの死を感じているのだろうか。グルーは心の中でカルルに別れを告げ、自分の遠吠えを上げた。

カルルと関わっていた子供たちも、カルルが亡くなったことを感じ取って涙を流した。森の中の魔獣や動物たちも、カルルの死を悼んで遠吠えを上げた。リウス王はカルルを亡くしたことを悔い、ルーも悲しみに暮れた。
グルーはテレパシーでルーの意識を呼びかけた。『ルーよ、聞こえるか』と。すると、ルーから返事が返ってきた。《うん、聞こえるよ。カルルはどうだった?》と。グルーはカルルとの別れの悲しみをルーに話した。

《最後に我を好きだと言われた、勝手な子であった》と。ルーはグルーの気持ちを察し、優しく慰めた。《そうなんだ、カルルはそんな子だよ》と。

しかし、グルーはまだカルルへの思いを断ち切れていなかった。《ルーよ、人間を食べたらどうなるのだったか》と訊ねた。ルーは《え?......確か、人間を捕食した神は神では無くなるって聞いたよ》と答えた。

グルーは考え込んだ。『......そうか、闇に墜ちると言うべきか』と。ルーが心配そうに《火竜様、何をお考えですか?》と訊ねると、グルーは決意を打ち明けた。《.....カルルを食べる》と。ルーはびっくりして、《えっ!?なんでそんなことを言うの!?》と驚いた。グルーはカルルの思い出を胸に刻み、彼を自分の中で消化し、生きていくことができると思ったのだ。

グルーは、国のためにカルルを食べる決意を固めた。しかし、彼の友人であるルーは、そのやり方に反対した。

《そんな方法は駄目だ!僕でも分かることだ》とルーは言った。グルーは、ルーの気持ちを理解していたが、自分の決断を曲げることはできなかった。

『分かっている。国は任せた』とグルーは言い、カルルを食べることを決めた。しかし、ルーはそれでも諦めず、神の使いでも制限があることを説明し、グルーに反論し続けた。グルーは、ルーの言葉に耳を傾けたが、やはり自分の決断を変えることはできなかった。

『喰う前に祝福を与える、後は頼んだぞ。』とグルーは言うと、カルルを食べるために口を開けた。しかし、火竜は話が終わる前に、ルーに風と獣を操る称号を与え、カルルを掴んで少し眺めた。

『まだ暖かいな......すまないが、約東は出来そうにない』と火竜は言い、グルーはゆっくりと口を開けて、カルルを食べた。


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