しばらくすると控えめなノック音が聞こえた
「はーい?」
「しょーり」
いつもより元気のない声で
俺の名前を呼ぶあなた
そんなあなたを部屋に招き入れた
聡には「ごめん、しばらく帰ってこないで」と
我ながらひどい文を送った
「ふられちゃったあ」
今にも泣きそうな顔で言うあなた
「聡くんね、好きな人がいるんだって」
聞いてもないことをポロポロ喋り出すと
同じように目からポロポロ涙をこぼした
「私、なんで勝利を好きにならなかったんだろう」
彼女の言葉に思わず目を見開き
そっと抱きしめてしまった
「いいよ。今日は沢山泣きな?」
「ありがとう。勝利のこと好きだよ」
「はいはい」
その好きは
友達として。でしょ?
Syori side Fin
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!