第16話

16.
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2021/12/13 10:28 更新






全体での練習を終えてから数日、





僕は練習以外でヒョンたちと会う機会がめっきり減った。












ご飯はジムのトレーナーさん考案のお弁当とプロテイン、ゆで卵。



空いた時間はとにかくジムとボイトレ。








正直焦っている。




筋肉をつけているはずなのに、

体重計に乗るといつの間にか体重が落ちていた。



タンパク質が足りないんだと思ってプロテインを飲んでるのに、


その効果がすぐに現れるわけでもない。






なのに腰や足についた脂肪はずっとそこに居着いてしまって離れようとしない。














それに追い打ちをかけたのは、全体練習のあと、日本メンバーでとった写真だった。




帰りの車でそれで気づいた。




将太郎さんが、僕の側にある手を自分の背中の後ろに引いていたことに。




僕の身体に触らないようにっていう配慮。



僕が"女"だから。












ご飯の味がしない。


身体を作る材料を、口に詰め込んで飲み込む。



喉に何か異物があるみたいに、飲み込むのが辛い。


















ドヨン
あなた!
チームでのダンス練習を終えて、

練習室を出て行こうとしたところを呼び止められる。
あなた
ドヨニヒョン?
ドヨン
これからボイトレ?
あなた
レッスンまで2時間くらいあるので運動しようかなって...
ドヨン
...大丈夫?
あなた
大丈夫ですよ!
ドヨン
ちょっと残って話さない?
あなた
ドヨン
ほら、最近練習終わったらすぐ個人練習行っちゃうから...
あなた
僕...今日ダメでしたか?
ドヨン
いや!


そういうわけじゃないんだけど
ヒョンを、困らせちゃダメだよね
あなた
...戻ります🙂
ドヨン
!うん🙂
みんなまだ、練習室の端にあるソファで談笑してるみたいだ。
へチャン
あ、ヒョンナンパ成功したんだ
ドヨン
ヤァ、ナンパって言うなよ
テン
ドヨンは優等生だからナンパなんてできないでしょ〜
"ナンパ"か...
ドヨン
だから〜できないんじゃなくて、してないから
ロンジュン
あなた予定あったんじゃないの?
あなた
や、ジム行こうと思ってて
ジェヒョン
ジム?
あなた
筋肉と体力つけないと💪
ジェヒョン
あぁ...そっか
なんだろ...この空気
クン
ここ座る?
床に座ろうとする僕を見て席を譲ろうとしてくれる
あなた
いえ、僕はここで大丈夫ですよ
クン
床、寒くない?
へチャンヒョンだってテンヒョンだって床に座ってるのに、僕だけ?




優しくしてくれるのに、


無性にイラついた。







特別扱いされるのが嫌でこんなに努力してるのに、


僕にだけ与えられる優しさなんていらない。




あなた
大丈夫ですから、本当に
クン
うん...
しまった...


親切にしてもらったのになにやってるんだ
あなた
はぁ....すみません...僕...
テン
ねぇ、どうして僕たちを避けるの?
あなた
テン
だってご飯誘っても断るし、


練習の後もすぐ帰っちゃうし。
あなた
ご飯は食事管理してるので今は食べに行けなくて...
クン
僕も今ダイエットしてるよ🙂
あなた
だけどやっぱり......女じゃ...ダメじゃないですか
テン
あなた、ねぇちょっとこっち見て
テンさんの真っ直ぐな視線にたじろいでしまいそうになる。




テン
テンはね、性別sex関係なく、あなたのダンスはかっこいいと思うよ?
ジェヒョン
今日の練習もさ、後半になってもバテてないし
ドヨン
ていうかずっと練習中言ってるじゃん
あなた
え...
練習中、確かによく声をかけてもらった。


でもあれは、僕のせいで空気が悪くならないようにしてくれてるんだと思ってた。



怒らなくても済むように激励してるんだと思ってた。




ロンジュン
はじめて練習したときは楽しそうだったのに最近はなんか、怯えてるみたいに見えたから...
ドヨン
数日のうちにいきなり痩せるから心配だったし
へチャン
あなたは色々考えてると思うけど、
何考えてるか教えてくれないと僕たちもわかんないんだよ?




いきなり沢山のことを言われてびっくりして言葉が出てこない。


怒られてるのに褒められてて、


ついさっきイライラしてた自分が、嬉しいのか泣きそうなのかもよくわからない。






あなた
....僕は....
あなた
早く...ヒョンたちと同じになりたくて...
クン
"同じ"?
へチャン
それって、おと..
へチャンヒョンが言いかけたところで、練習室のドアが勢いよく開いた。
あなた
ヌナ...
マネージャーヌナがドアをひくと、イスンマン先生がいらっしゃった。
ドヨン
こんにちは!
テン
こんにちは
へチャン
ご無沙汰しています。
みんな急いで立ち上がって、握手しながら挨拶する。


実際にお会いするのは、事務所に入って初めての挨拶のとき以来だ。
李承晩先生
ええと、
社員さん
あなたです。
あなた
こんにちは。
李承晩先生
うん、久しぶりだね。
あなた
よろしくお願いします。
オーラに圧倒されるまま頭を下げる。
李承晩先生
あれ、随分男らしくなっちゃった
「なっちゃった」?
あなた
...ありがとうございます。
李承晩先生
そうじゃなくてさ、言ってる意味、わからない?
あなた
...はい











本当は、どういう意味だか見当がつく。






そんな僕の目に気づいたのか、先生は少し笑って僕の肩を触った。





信頼した相手の肩を叩くのとは違う。




肩に残ったじっとりと生暖かい重さ。










李承晩先生
まぁ、そういうことだから、これからはNCTとして頑張ってね。
あなた
はい。
李承晩先生
皆も頑張ってね、じゃあ
クン
ありがとうございます。
ドヨン
ありがとうございます。
先生は、そのまま手を振って行ってしまった。














あなた
あの、
ドヨン
うん?
あなた
今日、ご飯一緒に食べてもいいですか?
クン
ロンジュン
うん、一緒に食べよう!
あなた
僕、勘違いしてたみたいです
へチャン
お、本当に?
僕に求められてるものは、


"男らしさ"なんかじゃなかった。







"女"が完全になくなった僕に価値なんてなかったんだ。




会社が僕に求めるものは"NEO"らしさで、


メンバーは別に、僕が男になったら受け入れようなんて考えてない。












本当になりたかった自分が"男"でも、


自分の居場所を作る価値が女でも男でもない存在なら、


そうする他の選択肢はない。










一目見て女だと認識できてこそ、



注目を呼ぶ唯一の価値なんだ。















それなら、



今すべきことは落ちすぎた肉をもう一度拾って、

"女らしさ唯一の魅力"を取り戻すことだ。














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