全体での練習を終えてから数日、
僕は練習以外でヒョンたちと会う機会がめっきり減った。
ご飯はジムのトレーナーさん考案のお弁当とプロテイン、ゆで卵。
空いた時間はとにかくジムとボイトレ。
正直焦っている。
筋肉をつけているはずなのに、
体重計に乗るといつの間にか体重が落ちていた。
タンパク質が足りないんだと思ってプロテインを飲んでるのに、
その効果がすぐに現れるわけでもない。
なのに腰や足についた脂肪はずっとそこに居着いてしまって離れようとしない。
それに追い打ちをかけたのは、全体練習のあと、日本メンバーでとった写真だった。
帰りの車でそれで気づいた。
将太郎さんが、僕の側にある手を自分の背中の後ろに引いていたことに。
僕の身体に触らないようにっていう配慮。
僕が"女"だから。
ご飯の味がしない。
身体を作る材料を、口に詰め込んで飲み込む。
喉に何か異物があるみたいに、飲み込むのが辛い。
チームでのダンス練習を終えて、
練習室を出て行こうとしたところを呼び止められる。
ヒョンを、困らせちゃダメだよね
みんなまだ、練習室の端にあるソファで談笑してるみたいだ。
"ナンパ"か...
なんだろ...この空気
床に座ろうとする僕を見て席を譲ろうとしてくれる
へチャンヒョンだってテンヒョンだって床に座ってるのに、僕だけ?
優しくしてくれるのに、
無性にイラついた。
特別扱いされるのが嫌でこんなに努力してるのに、
僕にだけ与えられる優しさなんていらない。
しまった...
親切にしてもらったのになにやってるんだ
テンさんの真っ直ぐな視線にたじろいでしまいそうになる。
練習中、確かによく声をかけてもらった。
でもあれは、僕のせいで空気が悪くならないようにしてくれてるんだと思ってた。
怒らなくても済むように激励してるんだと思ってた。
いきなり沢山のことを言われてびっくりして言葉が出てこない。
怒られてるのに褒められてて、
ついさっきイライラしてた自分が、嬉しいのか泣きそうなのかもよくわからない。
へチャンヒョンが言いかけたところで、練習室のドアが勢いよく開いた。
マネージャーヌナがドアをひくと、イスンマン先生がいらっしゃった。
みんな急いで立ち上がって、握手しながら挨拶する。
実際にお会いするのは、事務所に入って初めての挨拶のとき以来だ。
オーラに圧倒されるまま頭を下げる。
「なっちゃった」?
本当は、どういう意味だか見当がつく。
そんな僕の目に気づいたのか、先生は少し笑って僕の肩を触った。
信頼した相手の肩を叩くのとは違う。
肩に残ったじっとりと生暖かい重さ。
先生は、そのまま手を振って行ってしまった。
僕に求められてるものは、
"男らしさ"なんかじゃなかった。
"女"が完全になくなった僕に価値なんてなかったんだ。
会社が僕に求めるものは"NEO"らしさで、
メンバーは別に、僕が男になったら受け入れようなんて考えてない。
本当になりたかった自分が"男"でも、
自分の居場所を作る価値が女でも男でもない存在なら、
そうする他の選択肢はない。
一目見て女だと認識できてこそ、
注目を呼ぶ唯一の価値なんだ。
それなら、
今すべきことは落ちすぎた肉をもう一度拾って、
"女らしさ"を取り戻すことだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!