と思った。
特攻資料館の外のベンチに座り、涙が枯れるまで泣いて、先生が買ってきてくれたミネラルウォーターをひと口飲んで、ふと空を見上げたとき。
と思った。
青く澄んだきれいな空。
ゆったりと流れていく白い雲。
フワリと肌を撫でるそよ風。
風に吹かれて戦ぐ緑。
空の真ん中を、ひこうきが飛んでいくのがみえた。
白い飛行機雲が青い空にぽっかりと浮かび上がる。
僕は空を仰いだまま、ゆっくりと目を閉じた。
あの事大には、こんなふうにノンビリ空を見上げることさえ出来なかった。
空を切り裂くように横切っていく爆撃機にみんなが怯えていた。
そんなことを思いながら、僕はバスに乗り込み、学校へと向かった。
バスを降りて、解散してから、校舎のトイレに向かった。
予想していた通り、まだ、少し目が赤かった。
いむくんが凍らせたペットボトルを貸してくれたから、バスの中で目を冷やしていたけれど、あれだけ泣いたら、学校についても少し晴れていた。
帰ろうとてして、僕は校門を出た。
校門を出て数歩進んだところで、僕はふと足を緩めた。
見慣れない制服の男の子が、植木の隙間からグラウンドを覗き込んでいたのだ。
思わず、立ち止まった。
その顔を見た瞬間、……僕には分かってしまったのだ。
この男の子は……
彼は首を傾げて不思議そうに僕を見ていたけれど、しばらくしてから、にこりとわらった。
その笑顔は、やっぱり、れるちの笑顔とおんなじだった。
優しくて透明な微笑み。
穏やかな表情を浮かべたまま、男の子が口を開いた。
僕はぽかんとしたまま、
と頷いた。
なんとか答えると、彼はふんわりと笑顔の花を咲かせた。
男の子がこっちに手を伸ばしてきた。
僕が反射的に右手を上げると、男の子がしっかりと僕の手を捉えた。
骨ばっているけれど、なめらかな感触の、大きな手。
と、心の中で呼ぶ。
と呟いて、ぼくは男の子の目を見つめた。
きらめく星明かりをやどしたような、
まっすぐてきれいな瞳だった。
たくさんの苦しみと悲しみと犠牲の上に築かれたこの新しい世界で、僕たちは、これからも生きていく。
この世界をつないでくれた、
数え切れない人たちの命と愛を、全身に感じながら。
ーねぇ、れるち。
僕の声が聞こえますか。
君は今、どこにいるの?
そこは、痛みも苦しみも悲しみもない、穏やかな場所ですか?
風に吹かれる花びらのように儚く散ってしまったあなたが、
せめて今は、優しい夢の中で、安らかに眠っていることを祈ります___。
NEXT…………Epilogue












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。