前の話
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⚠️注意⚠️
この小説はクトゥルフ神話TRPG「VOID」の自陣卓
「#かまぼこラムネ卓」の二次創作です。
セッションバレが大いに含まれます。
また、CP要素やBL要素があったりなかったりします。
それでも良ければ、この物語を楽しんでください。
金属の匂いが混じった風が、夜を切り裂いていた。
その夜、二つの戦場は同時に崩れかけていた。
離れた場所で、それぞれが、
同じように限界へと追い込まれていた。
⸻
コンクリートの廃ビル。
崩れかけた階層の中で、誰かが膝をついていた。
ぼんやりと鈍く光っていた月が
雲を押し退け、地上に光を降り注ぎ
その人物___________命を照らす
呼吸が重い。
視界が滲む。
血の匂いが、自分のものか
敵のものかももう分からない。
目の前の敵は強い。
一人では勝てない相手だった。
弾丸が飛ぶ。
避けきれず、肩が熱く、
生暖かい体液が滴る不快感。
「っ……まだ……」
立ち上がろうとした足が震える。
視界の端が黒く潰れかける。
それでも、思考は一つだけ離れない。
(七橋先輩なら、こういう時どう動く?)
ふざけたような笑い方。
人の髪を勝手に触る癖。
無駄に余裕ぶった声。
それが、今はやけに鮮明だった。
「...あの人に、まだ何も伝えてねーんだよ、」
声になった瞬間、足にもう一度力が入る。
⸻
同時刻。
別の区画、崩壊した倉庫跡。
七橋は壁に叩きつけられ、片膝をついていた。
息が浅い。
口の中に鉄の味が広がる。
敵は複数。
しかも冷静で、隙がない。
「……あー、ホント最悪」
笑おうとして、声がかすれる。
いつもの軽さはもう形を保てていない。
殴られた腕が痺れている。
思考が一瞬遅れる。
その一瞬で、視界が揺れた。
(命、、絶対、生きててね、)
不意に浮かんだのは、白い髪の青年だった。
まだ未熟で、でも目だけは真っ直ぐだった。
必死に隠しているくせに、感情がすぐ顔に出る。
あの目が、今も頭から離れない。
「……ははっ、、後輩指導に行ってあげないと、」
吐き捨てるように言って、七橋は立ち上がった。
その瞬間だけ、確かに生き延びる理由がそこにあった。
⸻
命side
敵の刃が頬を掠める。
熱い。遅れて痛みが来る。
それでも、命は前に出た。
一歩。
また一歩。
身体が限界でも、止まれない。
(あの人に、まだ何も言ってない)
ふざけた顔。
からかう声。
でも時々、ひどく真面目な目をする人。
その目を思い出すと、足が止まらなくなる。
「……こんな所で、死んでたまるか」
振り抜いた刀が、敵の体勢を崩す。
その一瞬の隙を逃さなかった。
⸻
七橋side
倉庫の中、最後の一人と対峙する。
呼吸は乱れているのに、頭だけは妙に冴えていた。
(命は……)
不意に浮かぶ顔に、自嘲するような笑みが漏れる。
守りたいとか、そういう綺麗なものじゃない。
もっと厄介で、どうしようもない感情だった。
“まだ見ていたい”
“まだ隣にいたい”
そんな、言葉にすらならない欲が残っている。
「……こんな所で死んでたまるか」
低く呟いた瞬間、七橋は踏み込んだ。
迷いはもうなかった。
⸻
命side
最後の一撃。
敵が崩れる音が遠くで聞こえる。
膝から力が抜ける寸前で、命は壁に手をついた。
荒い呼吸の中で、頭に浮かぶ。
(無事でいろよ、七橋先輩)
自分でも驚くほど、それは祈りに近かった。
⸻
七橋side
敵が倒れる音。
静寂が戻る。
七橋は天井を見上げたまま、息を吐いた。
「……ったく、無茶してそうだな」
声は誰にも届かない。
それでも、確信だけはあった。
あいつは生きてる。
たぶん、自分と同じように。
⸻
同時刻
離れた二つの場所で、ほぼ同時に。
同じように崩れかけた身体で。
同じように息を整えながら。
二人は、同じことを思っていた。
(まだ終われない)
(まだ、あいつに会ってない)
そして、どちらも気づいていない。
その理由が、ただの執念ではないことに。
⸻
夜風が、静かに街を抜けていく。
戦いは終わったのに、終わっていないものだけが胸に残る。
まだ、言葉にしていないものがある。
まだ、伝えていないものがある。
それだけが、二人を生かしていた。
ちゅ












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。