魔法不全者ことマッシュが
イーストンにいることについてのテロは一旦収まり
最終尋問が明日に迫っていた。
…本当に合格出来るのか?
合格者数も伝えられてない、
もしかしたら合格出来るのは一人だけかもしれない。
そもそも“候補”だから、
合格したとしても神覚者に絶対なれるわけでは無い。
不安と焦りが頭の中をぐるぐる回り続ける。
物音ひとつに酷く苛立って眠れない
恐らくドットも眠れていないのだろう。
ベッドから立ち上がるときの木の軋む音でさえ
敏感になった心を逆撫でする。
カチャカチャと夜目の効かない暗がりを弄った後
夜でも目立つ赤色がフローリングにシミをつくる。
何回切ったかなんてもう覚えてない
何度も何度も治しては切って、
ベッドに行ってはイラついて
また切りに行ってを繰り返している。
落ち着かない自分を落ち着かせるために。
何度かそれを繰り返していると、
コンコンとノックがされ、窓を見上げると
窓にフクロウがいることに気づいた。
ガラリと立て付けの悪い窓を開け
フクロウをよく見ると、
クラウン家の紋章が目に入った。
あまりの驚きと恐怖に喉から音が鳴る
今まで実家から何か送られてくることは
ほんの一度も無かったのに。
フクロウの目が光っているように感じて
異様な威圧感が恐怖を後押しする。
なぜだか嫌な予感がして
窓を閉めようとしたが隙をつかれて中に入られた。
ベッドに我が物顔で立つフクロウは
早く手紙を取れと言っている。
恐る恐る手紙を受け取ると
フクロウは颯爽と窓からどこかへ飛んでいった。
丁寧に折りたたまれ、
クラウン家の紋章が押された
真っ赤な封蝋に猛烈に吐き気がする。
何が、この中に書いてあるのだろうか。
ネガティブな予想ばかりが浮かんでくる。
形容しがたい気持ちと共にぐしゃりと手紙が歪む
だが、貴族の家から、しかも実家の手紙ときたら
読む以外の選択肢はない。
ペーパーナイフで封を開け
恐る恐る手紙を取り出す。
気持ちの悪い夜に
高い紙を切り裂く音が高らかになった。
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◯月×日、午後5時〜
貴族の舞踏会に招待してやる
強制参加だ、意義は認めん。
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拝啓も敬具も何もない雑な手紙、
家を継ぐ気のない人間に敬う気持ちはないのだろう
どうせ今回の舞踏会も
“クラウン家の長男”が“神覚者選抜試験を突破した”
それを貴族連中に自慢して回りたいのだろう。
しかも、明日、
最終尋問が控えてるのに…
あぁ、午後だから…行かなくちゃ…
貴族連中には、もう会いたく無いのに…。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!