無駄な思考を咀嚼して飲み込む。
今、後悔したって意味はない。
もう決めてしまったから演じきるしか道はない。
消えていった幻の代わりに、
編入試験の時面接した部屋が目前に広がる。
嫌な思い出が想起され、少しばかりたじろいだ。
ウォールバーグ・バイガンという人物はきっと
形式的な敬語や会話は余り好まないだろう。
どちらかと言えばフランクに接した方が
懐に入りやすいし、きっと余計な詮索はされない。
声色はいつも通り、文章は敬語に。
編入試験とは違い
目の前で向かい合っての面接。
身長差があるからかはたまた他の何かか
異様な威圧感と見通す様な目が怖い。
故意的に目を合わせるのを嫌っている。
生きる伝説的な扱いをされるワシに恐れ
目を逸らす生徒も一定数はいるが、
ランス・クラウンに限ってそれはないじゃろう。
そもそも、
この目はワシには向けられていない。
他の…いや、他人の目を見ている。
異常な他人から与えられる賞賛への執着
他人からの評価に対する異常な恐怖心。
自身はどうなろうとも、か
本物の自己犠牲の塊じゃの。
それを言って
次々と破滅していった子達がどれほどいるものか。
自嘲気味に笑うランス・クラウンからは
明確な意思は伝わってこない。
絡み合って、縛り上げて、
物語通りに事を進めて、その後は?
そんなこと言わないでよ
覚悟なんて、する意味ないんだから。
腕のシャツを捲り上げられ
醜い傷があらわになる。
バレた、バレてた、あぁ、
妙に納得する、そりゃそうだ。
嘘はいずれバレるものなのだから。
真っ白になった頭が思考で真っ黒に染まっていく
いやだ、いやだ、ランス・クラウンは
こうじゃない、ちがう、
ランス・クラウンは、完璧でなければ。
完璧じゃなきゃ許されない。
許されるためには、完璧を演じなきゃいけない。
人殺しが一丁前に楽しく生きてて良いわけない。
人殺しが、人殺し、人殺しのくせに。
ハッとして、強引にに手を振り払う
捲られた腕のシャツを早く早くと戻す。
さっきまでの雰囲気がガラリと変わる。
怒られる、怒られる、いやだ。
どうせ怒鳴られるんだ、叩かれるんだ。
挙げ句の果てに呆れられて見放されるんだ。
いやだ、見捨てないで、怒らないで
頭ごなしに怒られると思わず考えて
体をこわばらせ、俯いて頭を差し出す。
…が、いつまで経っても衝撃は来なかった。
遠慮気味に顔を挙げると、何故か頭を撫でられた。
予想していたこととの違いに驚きを隠せない。
目を見開いて、体が固まる。
校長の口髭が動いたかと思えば
不合格じゃ、ない…??
優しい声色。
呆れではない、他の何か。
…僕は知らない。
頼ってしまったら、戻れなくなる。
形式的な会釈をした後
扉を出ると、
最初の、魔法陣に足を踏み入れた場所に転移した。
もう興味がないと言いたげに
がらんとした大聖堂の様な場所に
マッシュ達がぽつんと待っていた。
フィンが最初にこちらに気づき
ものすごく心配そうな顔で駆け寄ってくる。
マッシュ達も追うように駆け寄って来た。
疑問を感じながらも時計を見ると、
もう学校を出なければならない時間だった。
嫌だなぁ、めんどくさい
どうせならフィン達と喋っていたい。
でも、行かなきゃ怒られるだろうし
ランス・クラウンとしてのメンツも丸潰れだ。
シュークリームパーティーに誘われているが
仕方ない。
そういって、何も説明せずに
フィン達を押し除け、実家へ箒を飛ばした。
描きダメが無くなったのと、
校長との掛け合いに悩み続けてました。
結局変な感じになったんですけどね。
次の話も凄く悩むと思うので、ご了承ください。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。