__宝娘姫の屋敷前にて__
「…………」
「……(;´゚д゚)ゞ」
「……何故今時戻って来られたのですか、寝床が要るなら、到着の3時間と5分前には必ず届くよう言伝か文か何かしら送るよう散々御伝えしていましたよね。」
「いやな、可愛い姫さんよ、これには唐突で緊急でとても放っておけない用事があって…」
「貴女のその言い訳は、貴女がまだこんっっっっっっっなちっぽけなロリロリ神ちゃまの時からよくお聞きしておりましてね。唐突に凸られて最も御迷惑被るのは仕いの瀧なんですよ。
「今回はゐわりさんの御訪問に免じて布団は出しますし茶も菓子も御許ししますが、明日の正午までには瀧に理を入れた上で出発を頼みます。」
「ああぁ……」
南の里周辺で、殺と別れた咲子とゐわりは、咲子の無茶ぶり満載の脳味噌により、皆様大好き姫美鷺宝娘姫の屋敷へ戻ろうという釘の外れた思考のもと、現在に至る。
まぁ咲子は宝娘の『到着の3時間と5分前には必ず届くように言伝か文をやる。』という準則に従ったことは一度もない。(宝娘姫の少々無茶な規則のこともあるが)
一方ゐわりは殺のこともあり、少々気落ちしていたが、宝娘に豪邸のような屋敷を案内してもらい、少し気分は良くなっていた。
急な訪問で、更に二人ということもあり、一部屋しか用意はされなかったが十分だろう。
「嗚呼全く、旅というのは中々楽しいもんではあるが、苦労も多いのがなぁ」
小さな鞄を部屋の隅に投げ出し、身体的疲労が相当だったのか、咲子はこたつの横に身ごと投げ出した。
「それが貴女の選んだ茨道でしてよ。ほら、貴女の御好みの抹茶を淹れました。」
こたつの机の上に蜜柑と一緒に茶を乗せた御盆を置き、宝娘はやれやれとこたつの電源を入れた。
「東の里では、抹茶は苦いのですよね。無糖のものも御用意しましたよ。」
宝娘は咲子とは別の色の濃い抹茶をゐわりに差し出した。東の里では本来苦いままの抹茶を飲むのが一般的であり、その一方、北の里の抹茶は最も甘く、よく金平糖を添えて飲まれることが多い。
「有難う御座います。」
ゐわりは正座で座り、膝だけをこたつに入れて深々と御辞儀をした。
「宝娘殿、最近此処等で号外売りがやって来ていることは存じているかね?」
「……?此処等は号外売りより、瓦版の方が多いですよ。」
瓦版
…江戸時代から明治にかけて出版された庶民向けの情報印刷物。江戸の大火事や外国船交流についての記事が多い。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。