すっかり夜も深まった 。
私は自室で机の前に 。
机の上には自国の歴史書の諸々が広げられていた 。
開かれていたのは 、貴族社会の中では常識と言っても過言ではない「有名貴族」 。
爵位の高い貴族やその周りの中心人物をまとめた本だ 。
私は昨年度版の「有名貴族」を読んで勉強を_
しているわけがない 。
私が机の下で触っているのは「リモメセ」 。
隣国が開発した物 。
言葉を文字に起こし 、遠隔の人に送ることが出来る電子機器 。
自国ではそこまでの技術はなく 、電子機器なんて一部の博識者が「未来の話」として語るだけ 。
メラロイとメトワールの仲は険悪で 、戦争が始まる可能性だってあると言われている 。
もちろん「リモメセ」なんて 、メトワールで認められているはずがない 。
「戦争のための道具」という噂もあるくらいだ 。
メラロイに武器開発といった話は無いが 、「本当に勝てる相手なのか?」と思う 。しかし 、「今現在は国家間の仲は悪かろうとその程度で済んでおり 、武力行使の展開になることは無い」という一般見解があるのも事実だ 。
何はともかく 、唯一のファリルの正妃の子である私は「リモメセ」を使うような痴態を周りに晒すわけにはいかない 。それは 、国として禁じられていることなので市民でも同じことに思えるが 、私は「全然違う」と言い聞かせる 。そう信じないと「自分は用済み」そんな考えがちらついてしまうから 。
確かに私は 、文法の勉強をしようと机に向かった 。
しかし結局は偽装工作に走り 、禁じられた遊び「リモメセ」をしている始末 。
「もしかしたらウパさんが何か送っているかもしれない」そんな思いが頭をかすめ 、ついつい確認してしまう 。
目の留まる場所に置くのは良くないのかもしれない …
中毒になりかけている 。
ちなみに相手はウパさん 。彼としかチャットをしたことはない 。友人も仲の良い家族もいない私に 、チャットをしたい人なんていない 。第一 、話したら密告される可能性が頭をよぎるのは当然のことだ 。
そもそも 、彼と話したくて私は_私達は何とか伝手を上手いこと行使し 、国内で「リモメセ」を手に入れたのだ 。禁じた物は結局どこかに出回っているもの 。人間の性なのだろう 。禁じられたものを求める人間がいて 、そこに目をつける人間もいて 。
しかし 、彼だってバレるとただじゃ済まないだろう 。
大した重要度も無くなった私達は非国民だ 。
刹那ドアをノックする音と振動に 、ビクリと肩が大きく反応する 。
何も怖がる必要は無い 。呼びに来るのは基本使用人 。ノックをする上 、私が扉を開けるまで扉を開けることはない … はず 。
実際にはノックをしないどころか無言で平然と入ってくる使用人もいるのだが 、勤めが長く使用人としての位の高い者ばかりなので 、夕食といったことで呼びに来るはずがない 。
我ながらビビり過ぎだと思うが 、このくらいが丁度良い 。
油断してバレると取り返しがつかない 。
これは言わば犯罪で 、私は罪人である 。
重い腰を上げ 、ドアを開ける 。
やはりただのメイドだった 。
そのまま 、開きかけのドアを放置し廊下を颯爽と 、しかしお嬢様らしくお淑やかに歩き出す 。
名も知れぬメイドが丁重にドアを閉め 、私の後ろを手を前に組みながら静かについてくる 。
夕食は嫌いじゃない 。私が3姉妹の中で一番偉いんだって 、席順で再確認できるから 。「私は求められてる」って幻想に少し信憑性が高まるような気がするから___
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。