あなたはスマホを片手に、談話室でそう呟く。
彼の画面には、モストロラウンジで女装して歌っているあなたの動画が流れている。
昨日の放課後、ケイトが撮影してマジカメに上げたものだ。
声をかけられたケイトは気まずそうに微笑みながら答える。
あなたの歌唱力の高さでプチバズりしたこの動画のコメント欄は、「歌上手いのに女装下手すぎてw」「何これ罰ゲーム?」などのコメントが数十件以上ある。
あなたはムスッとしたままスマホの電源を落とす。
そう。
ハーツラビュル生が飽きて来なくなっても、この男だけは毎日あなたの歌を聞きに来ていた。
「そうだな」とトレイはコーヒーを1口飲んでから、あなたの安いウィッグの先端をつまむ。
不自然にテカったピンクのウィッグは、絹のように指の間を通り過ぎていく。
あなたはヒールの音を鳴らしながらステージの上へと向かう。そしていつも通りの完璧な歌を披露する。
彼女が歌い出すと、何席かがどよめく。
トレイはじっと、後ろの席の学生の話に耳を傾ける。
少し嫉妬をチラつかせるトレイに、ジェイドが歩み寄ってささやく。
そう言ってメニューの中のパフェに指を置くジェイド。
トレイは後ろの生徒をチラッと見てから、はぁとため息をついた。
モテる恋人を持つのは辛い。
トレイは困ったように微笑むと、こう言った。
と。
ジェイドは美しい所作でメニューをたたみ、回収する。
ステージを終えたあなたは、モストロラウンジの巨大パフェを頬張りながらそう言う。
トレイの横にピッタリと座るあなたに、各席から羨望の眼差しが集うが、本人は気づかずひたすら口にパフェを運ぶ。
そんなあなたをトレイは満足そうに見つめる。
トレイが少し口を開けると、あなたがパフェを1口食べさせる。
何人かの生徒が思わず立ち上がる。
みんなのアイドルが男にあーんをしてあげているのだ。羨ましくないわけが無い。
だが本人たちは気にせず、ひょうひょうとしている。
トレイはその視線に気づいているからか、当てつけのようにもう1回あなたに食べさせてもらった。
…To be continued ♣︎
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!