憂太side
先生に任務だと伝えられた僕は、禪院さんと一緒に何かの学校のような建物の前に来ていた。
建物からは何やら不気味な雰囲気を感じ、寒気がする。
五条先生が立ち止まって言った。
僕たちの前を先導して歩いていた先生は後ろを振り向きながら答える。
(…死んじゃってることもあるの…?)
そう思った僕の隣で先生が右手の指を2本立てて何か唱えた。
まるで頑張れよというように僕の肩に一度手を乗せてから先生は帳の範囲外に歩いて行く
帳の範囲外に出た先生は後ろを振り返りながら言った。
パサッ…
武器を入れていた袋が禪院さんの足元に落ちる。
武器を回しながら禪院さんは薙刀を構えた。
怖…!と思いながら少し後ずさる。
舌を出しながら大きな口を開けてこちらへ走ってくる呪霊。
一瞬にして禪院さんは呪霊の方へ跳んだ。
そう言って禪院さんは薙刀を振り回して三体の呪霊を倒した。
(……すごい…一振りで…!)
そういうと禪院さんは校舎の方へ歩いていく。
禅院さんが僕の前を堂々と歩いていた。
(こ、ここここ怖っ…!)
廊下を振り返ると、教室のドアから呪霊が顔を覗かせてこちらを見ているのがわかる。
突然、禪院さんが話しかけてきた
…僕に。
(……何級?)
(バカ…目隠し??)
目隠しの五条先生の顔がいっぱい頭をよぎる。
パシン
僕の学生証は奪い取られた…
禪院さんが振り返る先にいたのは、本当に大きな呪霊だった。
バリン!!
ガシャガシャンバリンバリン!!!
校舎の窓は全て割れ、壁が崩壊し、呪霊の全貌が現れる。
空中で身を躱し、呪具を振り回して攻撃しようとする禪院さん。
すると呪霊は上を向き大きな口を開けて構えた。
禪院さんの呪具は呪霊の歯に当たって弾かれてしまう。
そのまま僕も一緒に呪霊の口の中へ落ちてしまった。
ゴクン…
気を失っていたらしい僕は、禪院さんのそう怒鳴る声で目を覚ました。
(えっ………てことは…)
禪院さんが僕を指差しながら言う。
そこにいたのは一人の男の子と、その子よりも小さいもう一人の男の子だった。
回想
禪院さんの方に駆け寄って聞くが…
なぜだか禪院さんは少しふらついてきたように見えた。
ドサッ…
(!?)
そのまま禪院さんは倒れる。
ふと彼女の太ももを見ると、擦り傷のようなところにたくさんの目が並んでいた。
男の子の声にハッとする。
男の子は涙を流しながらそう僕に問いかけた。
ガシッ…
禪院さんが僕の胸ぐらを掴んで言った。
………僕は
僕が閉じこもっていたあの部屋の記憶が蘇る。
禪院さんの言葉にハッと気付いた。
ドサッ…
最後の力が尽きて禪院さんは倒れる。
僕は自分の首にかけてあるネックレスから指輪を引きちぎった。
(………里香ちゃん)
先程の指輪を自身の左手の薬指にはめる。
(力を貸して…!)
大きな呪霊の腹が、中から何やら尖ったもので突き破られた。
グシャ…
大きな呪霊の頭は里香ちゃんの爪に潰された。
ベシャ…
呪霊の血が大量に吹き飛ぶ。
あなたside
(何、この呪力!?)
丁度任務が終わって一休みしていたところで、
尋常じゃないほどの呪力を、ある小学校の方から感じた。
急いでそこへ走って行く。
小学校に向かう道の途中で、悟を見つけた。
悟はこちらを振り返る。
まぁ、そっか。悟、最強だし。
そう思って内心ほっとする。
すると、
ベチャッ…という音と共に呪霊の血が、校外の壁にまで飛び散ってきた。
悟も同じようなことを考えていたようで、コクコクと頷いていた。
憂太side
里香ちゃんが呪霊の血を見ながら言った。
里香ちゃんが呪霊の腹を引き裂いていく。
屋上から大量のの血が流れ、飛び散り、降ってきた。
僕は両手に二人の子供、背中に禪院さんを抱えた状態で歩いている。
(早くみんなを先生に診せなきゃ……)
(呪いが里香ちゃんの気を引いてるうちに…)
だが、禪院さんみたく運動神経がいいわけでもない僕にとって、
子供二人と女性一人を運ぶのはキツかった。
それでも………
(まだ、倒れるな……!)
(まだ!)
それでも僕は、力を振り絞って一歩一歩歩いた。
(ここで変わるって、決めたじゃないか!)
(…里香ちゃん。)
あなたside
帳が消え、憂太が校門の前に倒れる。
その手には、真希と二人の子供が抱えられていた。
(無事に戻って来れたんだね…よかったぁ)
私と悟は顔を見合わせて微笑んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。