衣装を着て、メイクをしてもらう。
みんなとスタッフさんのおかげで、体調も少し良くなった。
準備もバッチリ。
モニターを確認すると、ちょうどラストの曲をやっていた。
お客さんのボルテージも最高潮だ。
ステージ前方、上方から噴射される大量の炎。
……………客席側にいても熱いから、ステージはもう地獄だ。
今回のことは、ちゃんと反省しよう。
「さすがに無理でした」って、ボスにも謝ろう。
もしくは、もう少し作業効率を上げて_______________
コンコン、とドアが叩かれて、一気に開く。
ツアーTシャツに、直前の衣装のズボン。
私だって、みんなと同じ格好でステージに立ちたいから。
アンコールを待つお客さんの熱気を、液晶越しに感じる。
確かな足取りで廊下を歩く。
ステージが近づくと、会場の空気が肌を刺激した。
本当は少し、怖いのかもしれない。
秘密も、目的も、いつかはみんなにバレてしまう。
バレても、全然大丈夫だと思ってた。
だってここは、ただの踏み台でしかなかったんだから。
でも。
その言葉に、黙って首を縦に振る。
今もみんなが、私“たち”を呼んでくれてる。
もう少し。
もう少し。
お客さんの歓声が大きくなる。
あっという間に1曲が過ぎていく。
嫌いな時間はずっと続くのに、
楽しい一瞬は、永遠になんてならない。
……………………だけど。
階段の先にいるのは、かけがえのない仲間。
逆光で輝く佐久間が、マイクを差し出してくる。
まるでそれは、シンデレラが王子様に巡り合ったようで。
なんだか私は、泣きそうになった。
もう、迷いはない。
ここは、「どうでもいい場所」なんかじゃないんだから。
マイクを握りしめる。エネルギーが身体を伝う。
嘘つきでもいい。どんな私でもいい。
…………………どうかもう少し、ここにいたい。
だって私は_______________
一つ一つ、階段を踏みしめて。
光の中へと飛び込んでいった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。