第2話

本当の涙を流したあの日… (はしみず)
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2021/03/19 08:08
涼side


世の中には自分のことが好きだと言える人がどのくらいいるのだろうか少なくとも俺は自分のことが嫌いだ。
子供の頃からそうだった何をしても最後までやりきったことがない人よりすぐれているものもない。
いや、得意なことがあっても〘自分よりも上手な人はたくさんいる〙と、特技に対しても自信を持つことが出来なかった
俺は自己肯定感が低いのだこれは、小さな頃からの親の育てかたにより身につけられるものらしい。俺の家は両親共働きで、留守番が多かった。
母は強い人で、妥協を許さない人だった仕事から疲れて帰ってきても家事に手を抜くことはなかった。 そして、子供を一切誉めない人だった。
涼  (幼少期)
涼 (幼少期)
お母さん、みて!
小学生の頃、テストでいい点をとってもその点を喜んでくれることは無かった
お母さん
お母さん
お母さん
お母さん
なぜこんな間違いをしたの?ボーっとしてたんでしょ?
お母さん
お母さん
“あと一問で満点だったのに”
涼  (幼少期)
涼 (幼少期)
(…一問間違えた。このテストは失敗だ、反省しなきゃ)
1%でも自分に非があれば、そこを反省して自分を責めた
中学生のときには、何もかもどうでも良くなった
涼 (中学生)
涼 (中学生)
俺って、生きている意味あるのかな
別に生きてても死んでても良かった。なんのためにこの世にいるのか分からなかったなんだかよく分からないが、毎日泣いていた。理由は自分にもわからなかったただ健康でないことは分かっていた。
涼 (中学生)
涼 (中学生)
(病院に行かなければ…どんどんおかしくなってしまう)
その日、母に心療内科を受信したいと相談してみた
お母さん
お母さん
…何言ってるの?自分がおかしいなんて自覚できる奴は、まだまだ頑張れるんだよ
お母さん
お母さん
甘えてるんじゃないの
この時、俺は母に何を言っても理解して貰えないと悟った
俺は高校生になったなにかに一生懸命取り組むことがなかった俺は今までの自分を変えたくて勉強を頑張ろうと決めた
涼
(自分に自信を持ちたい…!勉強していい大学へ行けば自分を好きになれるはず!)
この時の俺は今までの無気力な自分ではなかった勉強が俺の存在意義となっていたからだ遅くまで勉強し、親と会話することもほとんどなく、ご飯とお風呂、寝るだけの日々が続いた
朝、学校へ向かう満員電車の中での圧迫感に吐き気がした
涼
(いい大学に行って、いい会社に就職できても、おれば自分を認められるのかな…)
染み付いた考え方というのは、生活が変化しても治らないものらしい学校でトラブルが起きた時も、俺は少しでも自分に非があれば『ごめんね』と頭をさげた
涼
(あいつとあいつが喧嘩をしたのは俺が上手く話を聞いてあげられなかったから…)
涼
(隣の席の人が学校に来なくなったのは俺が寄り添ってあげられなかったからだ…もっと声をかけてあげられてたら…)
本心は『俺のせいではないのに』だった でも、自分がもっと要領よく動ければ防げたのも事実だったと思う だから謝った。それが手っ取り早いと思った でも周りは思ってもいないのにすぐ謝る俺にとって不快感を抱いていたらしい。  “偽善者”  俺にはなんでも話せるような友達は出来なかった。

2年生になった年の6月自分に異変を感じた。普段しないようなミスを繰り返す 頭痛が酷くて勉強にならなかった 一桁の計算もできないほどだった。ミスのせいで勉強を終わらすのに夜中までかかった。そのようなことが2ヶ月程続いた
次の日の朝、満員電車で過呼吸を起こした
涼
(もう、限界だ!)
その日は休み、病院を受信した。
瑞稀 (医師)
瑞稀 (医師)
適応障害だね。勉強も無理してたみたいだし、少し休んでね。
病院から診断書が出たので学校を休むことにした。勉強からも少し離れてみることになった。限界はかなり前から感じていた。でも今まで何かを成し遂げたことの無い自分にはどこまでが限界か分からなかった。そして、休み始めたことで俺はまた自分の存在意義が分からなくなった。また成し遂げられずに逃げ出したという気持ちが余計に俺の精神状態を悪くした『無責任で、生きている価値がない』常にこれが頭の中を支配していた。考えるのが辛くて処方された薬を大量に飲むそして、自傷行為をする。意識が遠退いて、母に起こされ目を覚ませば次の日。毎日こんなことを繰り返していた 薬を貰いに病院へ通う。日に日に弱っていく俺に、先生は入院を勧めた。
精神科の病棟は俺にとって牢屋と同じだった。窓には鉄格子、病棟には鍵がかけられていた。大部屋には何人もの患者がいたが、カーテンで区切られることも無い。首を吊るなどの自○防止のためだ。

悲鳴や怒号は日常茶飯事、寝る時以外は意識を手放せない。辛かった
瑞稀 (医師)
瑞稀 (医師)
君、自分のこと好き?
週2回の診察日、先生は唐突に俺にそう聞いた 答えは考えるまもなく『いいえ』だ 
だけど込み上げる嗚咽で返事ができない
瑞稀 (医師)
瑞稀 (医師)
そっか、好きになりたかったんだね
先生は背中を擦りながらただなく俺が話し出せるまで待ってくれた
瑞稀 (医師)
瑞稀 (医師)
君の事情はここを受診した時から聞いているけど、君がここまで弱ってしまった原因は無理な勉強とお母さんでしょう。これからは勉強の仕方を改めること。それと、お母さんに『自分のことを愛していましたか?』と聞きなさい。そうすれば自分を認めてあげられるきっかけになるはずだから。
これはずっと疑問だった。小さい頃から母さんは俺を愛していないのではと 答えを聞くのも怖い。だがこれを聞かなければ俺は前に進めないと思った。

先生にお願いし、母に面会に来て貰えるよう伝えてもらうことにした

次の日、面会時間開始と同時に呼び出された面会室に案内されれば、母の姿があった
涼
母さん、仕事を休んで来てくれたんだ
俺を見た途端、母は顔を覆って泣き出した
それを見て俺も涙が出てくる 泣いているせいで言葉にはなっていないが母は俺が入院したことを自分のせいだと思っていて申し訳なかったという
お母さん
お母さん
ごめん、ごめんね…
母も大変だったのだろう。仕事をし、家事をして俺を可愛がる余裕なんてなかったのだ

誉めてあげられない、可愛がってあげられない自分にずっと罪悪感を抱えたまま生きてきたのだろう…
涼
母さん、俺のこと愛してた…?
お母さん
お母さん
そんなこと、当たり前でしょ!愛してないわけないでしょ!
俺は子供のように泣いた。小さい頃から持っていた黒いものが涙と一緒に溶けて出ていってるように感じた
染み付いた考え方というのは生活が変わってもなかなか治らない でも母の気持ちを聞けたことで、だんだんと気持ちを前に向けることが出来てきている
涼
(今日は学校の後、優斗と本屋に行く約束で、その後学校の復習して…)
お母さん
お母さん
早くしないと遅刻しちゃうよ〜!
涼
は〜い
世の中に『自分のことが好き』と言える人はどれだけいるのだろうか
涼
行ってきま〜す
俺はまだ完全に「好き!」と答えることはできないが少なくとも「嫌い」ではなくなってきている
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄❦ℯꫛᎴ❧
はい!今回はグッとくる感じの話をかいてみました!感想などはコメント欄に! 

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