満面の笑みでそう言った彼。
その表情は、どこか懐かしんでいるようだった。
うっとりとしながら昔話をする紅羽。自分は困惑したまま後退りをしてしまった。
すると……
足に鋭い痛みが走った。痛みを感知してすぐには声が出なかった。
…約10秒間…ものすごい速さで頭が回転し、状況を把握していた。
紅羽が話をしている間、自分は後退りをしてしまった。
その時に紅羽は自分の足にナイフを投げたのだろう。
足を見た時にナイフが両足に2本刺さっていた。
頭の回転が終わると、自分は叫んでいた。
痛い…そこまで深くはないけど…ジンジン痛い…
あと何?反射神経?…早すぎて見えなかった…
怪しく笑う紅羽は、自分にゆっくりと近づいてくる。
嫌だ、嫌だ…殺される…殺される…殺されてしまう…
カタカタと震えていると、紅羽は急に真顔になった。
ナイフを取り出し、それをまじまじと見ていた。
刃に映った自分の姿でも見ているのだろうか…何かを思い出しているような表情をしていた。
急に笑顔になった。紅羽は自分を殺そうと、自分に向かって走り出した。
いや、だ…嫌だ!ここで殺されてしまうだなんて…
世良さんや朱桜の安否を確認したい…だから…!
そう思い、刀を構えた…瞬間だった。
ドゴンッとなりながら、壁が壊された。
瓦礫と共に、血や傷だらけの世良さんが出てきた。
紅羽が舌打ちをした、すると紅羽はその場で倒れ込んでしまった。
自分が駆け寄ると、紅羽は意識を失っているようだった。
…一体、どういうことだろうか…
そう思っていると、急に身体がふわりと浮いた。
ちらりと横を見ると、ぐったりとしている紅羽がいた。
…世良さん、やっぱり優しいな…
そう思っていると、世良さんが走り出した。
は、早い…!頭が揺れる…!
…そうか、朱桜が追いかけてきているからか…
優しくそう言う世良さん。何だか心が少し軽くなった気がした。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。