僕は虐待を受けていた。
殴られて…蹴られて…
物を投げつけられて…刃物で傷をつけられて…
僕の体はもうぼろぼろだった。
僕は親に捨てられたんだ。
でも正直良かったと思う。
あそこに居たら僕は幸せだと思う日々が来なかったから。
来る前に羽が飛んでたと思うから。
でも僕は外を知らなかった。
何もかもが分からなくて
それでも僕は歩き続けた。
そして…そこで見つけたのは
水白の鳥居だった。
僕は何故か鳥居の向こうに引き寄せられた。
鳥居の向こうに居たのは…
袖が広くてワンピースみたいな…まるで昔の服の様な物を着ていた。
こう言うのを巫女装束って言うんだったか。
教科書に書いてあったな。
そんな事を思っていたら何故か初めましての感情が湧いてきた。
「お客さんなんて久しぶりだな」とクスッと笑う君の顔は…
何だか…とても…
と感じていた。
「綺麗」なんて感情は初めましてだった
自分自身も「綺麗」という感情が分からなかった。
でも何故か頭の中に「綺麗」という意味が分からない文字が浮かび上がった。
何故か君の眼は沈んでいた。
何故か君は見ず知らずの僕に抱きついてきた。
君は僕よりも背が高いから僕の顔は君の胸に。
すっぽりと君の暖かい腕に包み込まれる。
「君は僕と同じ」なんて
「ごめんね」なんて
さっきから沢山の初めましてがあって少し理解に困った。
そんな初めましての言葉にまた理解に困った。
「理解に困った。」そう思っていたら、何故か僕の足元に
水が降っていた。
雨かと思ったが、何故か空は晴天だった。
どこから水が落ちているんだろう。
そう考えていたら君は
また困惑した。
僕から水?そんな事を思っていたら
分かってしまったんだ。
いや、思い出してしまった。
君の一言で。
「涙。」これは初めましてじゃなかった。
遠い昔に封されたんだ。
涙を流す事を。
僕が気付く頃にはもっと泣いていたんだ。
「もっと泣いちゃった〜」と僕の眼に布を当て様とする君の細くて白い腕。
でもそんな君の腕の前に僕の腕をかざした。
さっきまで理解出来なかった言葉。
「君は僕と同じ。」理解出来たよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。